自分自身のお客さまでなくても気にかけられるか

後者の場合、そこにいる人の様子を気にする感覚がないのか、自分のことで頭がいっぱいで、他人や自社内でも他のことに関心を持つだけの心の余裕がないのか、社員教育がお粗末なのか、いずれにしても今後の展開が期待できる会社とは言いがたいです。

自分のところに来たお客さまではないから関係ない、受付に人はいなくてもそこに電話があるのだから十分だろう——。そういう感覚の人は、自分がその組織に所属する一員だという意識が欠如しています。会社全体のことを考えるなら、自分とは関係のないお客さまであっても、親切に応対するのが当然の務めなのです(セキュリティー上もそのほうが良いことは言うまでもありません)。

小さい会社でも、大きな会社でも、社員それぞれが「あれっ、これっておかしくないか?」という目で会社全体のことを考えられているかどうか、そしてそれに対して自分で動こうとするかどうかは、とても大事なことなのです。

気配りも「仕組み化」できる

これも気配りに関する話です。

私の知っているある会社は、応接室のテーブルの上に小さなメニュー・プレートが置いてあって、コーヒー、紅茶、ジュース、水、昆布茶などと書いてあり、「お好みのものをおっしゃってください」と言ってくれます。コーヒーなどはホットとアイスの両方があります。

口頭で「何がよろしいですか?」と聞いてもらえるのも親切ですが、あらかじめメニューが置かれていると、遠慮なく、そのときどきで飲みたいものをお願いすることができます。

そういうこまやかな心配りがうれしいわけですが、私がこれをいいなと思ったのは、気配りが「仕組み化」されている点です。メニューがあれば、誰がやっても同じ対応ができます。

仕組み化というと、いかに業務を効率化するかということのように捉えられやすいです
が、こうした業務とは関係のない小さなことも、会社における仕組みの一つです。

小宮一慶『伸びる会社、沈む会社の見分け方』(PHPビジネス新書)

もちろんいまの時代はできるだけ無駄なことはやめて、省力化したほうがいいのは確かです。しかし、その流れの中で来客にお茶の一杯も出すことをしなくなるのが、はたして会社にとっていいことでしょうか。

お越しいただいたお客さまに「この会社の対応はいつ来ても感じがいいなあ」と好感を抱いてもらえることは、仕事を円滑に進める上でも大事なことです。また、お客さまに、もっとこの会社に来たいなと思ってもらえるのではないでしょうか。

拙著『伸びる会社、沈む会社の見分け方』では、こうした企業の将来性を見極めるためのチェックポイントを多数紹介しています。

会社の将来性が気になる状況は、日常のいろいろなところにあります。

・経営者として、自分の会社が良い方向に進んでいるか、あるいは停滞要素をはらんでいるかを確認したい方
・自分の会社、あるいは取引先の会社に将来性があるかを冷静に分析してみたい方
・就職や転職にあたり、会社選びに悩んでいる方
・これから独立・起業して会社を起ち上げたいと考えている方
・投資するときの参考にしたい方

こういう方々に、ぜひ「会社を目利きする力」を磨いていただければと思っています。

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