率直に発言し、感情を素直に表す社員たち

メンタリングの場が予定調和に終わることなど皆無で、社員たちは皆それぞれに、思うことを率直に発言し、感情豊かに笑い、時には涙を流す。成長することに前向きで、アドバイスに対するのみ込みも早い。「どのようにすれば仕事を楽しめるか」という探究心も旺盛で、男女問わずエネルギッシュだ。

今までさまざまな人のキャリア相談に応じてきたが、これほど成長意欲が高く個性豊かな人材がそろう組織でメンタリングを行ったのは、初めての経験だった。

多様性のある会社(※2)の強みは、変化に強いことだ。特に、ビジネス環境の変化が早いベンチャー企業にとっては、非常に大きなメリットになる。社員それぞれが価値観や考え方に違いをもつため、組織としての守備範囲が広くなり、状況によって柔軟に役割を変化させることが可能になるからだ。

(※2)本リポートにおける「多様性のある会社」とは、社員のさまざまな個性を基とした違いを組織運営に取り入れて活用し、組織力やチーム力を強化している会社を意味している。

一方で、デメリットも存在する。例えば、効率性だ。均質的な人材がそろう会社であれば、暗黙の了解のうちに社員がまとまり効率的に物事を推し進めやすい。多様な人材が集まる会社ではそう簡単にはいかない。その都度、価値観や考え方の違いに折り合いをつけていかなければならず、何をするにも効率が落ちてしまう。

そこで、大切になるのは、統一的な価値観や会社のビジョンなどを社員としっかり共有することだ。物の見方や問題解決へのアプローチ方法の違いといった、社員一人ひとりの個性を尊重しながらも、会社がどこを目指しているのかという最終的な目標を共有するという考え方だ。

画像提供=ユニフォームネクスト
オフィスに張ったテント。中でミーティングをすることもある

「当たり前に」社長の考えが社員に伝わっている

メンタリングの回数を重ねていくうち、私は社員たちにある共通点が存在することに気がついた。それは、新たな気づきを得た際には必ず、

「そういえば以前に社長も同じことを言っていました」
「社長の言っていた意味はこういうことだったのですね」

と、社長の言葉を反芻はんすうしながら理解を深める点だ。

そんな社員たちの様子から、普段から自然に、社長の考えや会社の方向性を意識しながら物事を判断している日常が見て取れた。しかもそこには、「社長の言う通りにしないといけない」というようなプレッシャーは感じられない。社長の考えや会社の方向性が、社員たちに当たり前に浸透しているようだ。

私はこの当たり前に浸透している状態こそがユニネクの強みであり、社員の多様性を活かしつつ組織力やチーム力を強化して、右肩上がりに業績を伸ばし続けている秘訣ではないかと考えた。