プレゼンが劇的に良くなる「KISS」の法則

私がパブリックスピーキングのコーチたちに何度も口を酸っぱくして指導されたのは、以下のことでした。

「情報が多すぎる。本当に必要な情報はどれ?」
「そのエピソードは、この話に必要?」

何度も指摘されたのは、「効果的ではない言葉を減らす」作業でした。そして同時に、具体的に描写することも徹底させられました。

一般的にいうと、“Keep It Simple, Stupid/Keep It Simple, Short”といい、この頭文字をを取って、「KISSの法則」と呼ばれています。「短く、わかりやすく、簡潔に話せ」ということです。

さらにブレイクスルーメソッドでは従来の意味合いを発展させて、「Keep It Simple, Specific(KISS)」と提唱しています。これはシンプルかつ具体的を心掛けることで、「簡単・簡潔・簡明に話せ」という意味です。

削りつつも、五感に訴え具体的に

なぜそんなに削ぎ落とさなければいけないのか。スピーチでは映画やテレビと異なり、視覚的に情報をとらえることがむずかしいので、漠然とした情報ではなかなか相手に伝わりません。

リップシャッツ信元夏代『20字に削ぎ落とせ ワンビッグメッセージで相手を動かす』朝日新聞出版

また字に残る文書なら読み返せますが、人間の脳は初めて一度だけ耳で聞いた情報を、そこまですべて記憶に残しておくことはできません。

ですから、徹底的に削ぎ落とし、耳から入る情報を「簡単・簡潔・簡明」にしてあげることが必要なのです。いわば枝葉をのぞいた幹だけとなるから、聞き手にとっては道筋が辿りやすいストーリーとなり、まっすぐとゴールへと導くことができるのです。

しかし「簡単に」「誰にでもわかるように」「具体的なイメージがわく言葉を選びながら」話すという作業は、意識してやらないとできないことです。

たとえばある新車を説明する時に「アクセルを踏み込んだ時に伝わってくる感じがどうなのか」、あるいは新製品のカップヌードルは「お湯を注いで蓋をあけたときに、フワーッとあがる匂いがどうなのか」といったことを、具体的に、しかし簡潔に、五感に訴えるような表現をしてみると、相手への伝わり方は格段にあがります。

ぜひプレゼンやスピーチでは、キッスしてみましょう!

リップシャッツ 信元 夏代(りっぷしゃっつ・のぶもと・なつよ)
事業戦略コンサルタント、認定スピーチコーチ、プロフェッショナルスピーカー
1995年早稲田大学商学部卒業。ニューヨーク大学スターン・スクールオブビジネスにて経営学修士(MBA)取得。伊藤忠インターナショナル・インク(NY)、マッキンゼー・アンド・カンパニー(東京)を経て、2004年に事業戦略コンサルティング会社のアスパイア・インテリジェンスを設立。ニューヨークに在住し、調査分析、戦略設計、及びグローバルリーダー育成のための各種企業研修を提供している。2019年トーストマスターズインターナショナルの国際スピーチコンテストで世界トップ100入りを果たす。日本人で唯一のWorld Class Speaking認定講師。英語著書にブライアン・トレーシー氏との共著『The Success Blueprint』(Celebrity Press出版)がある。
(写真=iStock.com)
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