東京高裁が認めた『週刊文春』の「性的虐待報道」

私が読んだ限り、一般紙で彼の影の部分に触れたのは、朝日が第二社会面に掲載した「評伝」の末尾のこの数行だけだった。

「1999年には所属タレントへのセクハラを『週刊文春』で報じられた。文春側を名誉毀損(きそん)で訴えた裁判では、損害賠償として計120万円の支払いを命じる判決が確定したが、セクハラについての記事の重要部分は真実と認定された」

その『週刊文春』(7/25号)は、「稀代のプロデューサーの光と影」というサブタイトルを付けて、「ジャニー喜多川 審美眼と『性的虐待』」という特集を組んだ。

朝日が触れたように、文春は1999年に、ジャニー喜多川が少年たちに事務所で性的虐待をしているという告発記事を連載した。それに対してジャニーズ事務所は文春を名誉毀損で訴えたのである。

しかし、ジャニー喜多川は法廷で、少年たちが文春に語った性的虐待について、「彼たち(少年たち)はうその証言をしたということを、僕は明確には言い難いです」と証言したのだ。東京高裁はこのジャニーの発言をもとに、「文春が書いた少年たちの証言は真実性がある」と認めたのである。

「僕のファーストキッスはジャニーさんですからね」

今回も、嵐のメンバーと同年代の元ジュニアが、『文春』でこう語っている。

「成功したヤツはジャニーさんに感謝しているかもしれない……。でも、僕はそんな気持ちになれない。ジュニア時代、僕がジャニーさんの誘いに抵抗したら、ステージの隅っこに追いやられた。(中略)僕のファーストキッスはジャニーさんですからね。ショックでしたし、もうグレるしかないですよ。(中略)十代前半で悟ったというか、大人の世界って本当に汚いんだなって」

1999年の『文春』には、こんな赤裸々な少年の告白も載っていた。

「ジャニーさんの手の甲は毛深いんで、ちくちくするけれど、マッサージは筋肉がほぐれて本当にうまい。でも、パジャマを脱がすとすぐ口です。いつも歯が当たって、痛いんですよ」

朝起きると、少年の布団に5万円置いてあったという証言もある。彼らはなぜ、ジャニー喜多川に逆らえなかったのか?

「やっぱりデビューしたいじゃないですか。それで、しょうがないですね。しょうがないしか、なかったんです」

己の審美眼にかなった少年たちを集めてきて、デビューさせてあげる、スターにするからと甘言を用いて、彼らにこうした性的虐待をしていたのなら、どんなに素晴らしいアイドルを誕生させたとしても、それですべてが帳消しになる話ではない。