「CIAのスパイではないか」という噂もあった

こうした影の部分も含めて、ジャニー喜多川という人間を論じなくてはならないはずなのに、ジャニーズ事務所になると、週刊誌はすぐにジャーナリズムの旗をたたんで、まるで熱烈なファンのような大本営発表記事を書いて恥じることがない。

さらに、『文春』も触れているが、ジャニー喜多川には、「CIAのスパイではないか」という噂があった。

高野山真言宗米国別院の僧侶の次男として、アメリカ・ロサンゼルスで生まれた。姉はメリー喜多川で、事務所の副社長である。『文春』によれば、帰国した姉と弟は戦時中、親戚にあたる大谷貴義のもとに身を寄せていたという。大谷といえば、宝石商として財を成し、児玉誉士夫と並ぶ大物フィクサーといわれた。永田町では「福田赳夫のパトロン」として知られていた。

実は、私も大谷を知っている。取材で知り合ってから親しくなり、家に遊びに行き、私の結婚式の披露宴にも出席してもらった。残念ながら、喜多川姉弟のことは聞いていない。亡くなる前に聞いておけばよかった。

アイドル像については多弁だが、自身の過去には口を閉ざす

戦後、再び、ジャニー喜多川はアメリカへ行って、高校に通いながら、リトルトーキョーでショーを手伝っていた。その頃、美空ひばり、笠置シズ子、服部良一らと面識を持ったといわれる。米国籍だったため米軍に徴兵され、ジャニーは朝鮮戦争にも従軍している。

彼の知人によれば、「江田島にあった米軍兵学校で韓国語を学んだ。通訳として従軍したらしい」。再び日本に戻ったジャニーは、米国大使館に勤務して軍事顧問という肩書も持っていたそうである。

そうした経歴から、CIAのスパイ説が出てくるのだろうが、ジャニーズ取材歴50年で、『異能の男 ジャニー喜多川』(徳間書店)を出した小菅宏は、『文春』でこう話している。

「不躾とは思いつつ、ジャニー氏に『CIAのスパイだったの?』と尋ねたことがある。本人は『米国の情報機関で働いたことはあるけど、それ以上はノーコメント』と打ち切った。ことアイドル像については多弁な彼も、自身の過去には口を閉ざしていた」

これについては、これ以上の情報がないので触れないが、ジャニー喜多川を論じるなら、彼の性的嗜好とCIAスパイ説は避けては通れないと思う。