韓国が輸入する半導体原料の90%程度は日本から
一方、やや長めの時間軸で考えると、リスト規制の導入は徐々に韓国経済を圧迫するだろう。韓国にとって上記3品目の輸入は重要だ。韓国が輸入するレジストとフッ化ポリイミドの90%程度がわが国からのものだからだ。
サムスン電子の取り組みは、一時しのぎの措置であり根本解決ではない。韓国企業の対日交渉力もそれぞれ違う。韓国企業は他国産のフッ化水素を用いた半導体生産を試験的に行っているが、中国などのメーカーがわが国と同質の高純度フッ化水素を供給できるかは不透明だ。
加えて、サムスン電子は半導体に次ぐ収益源を育てることができていない。サムスン電子の売上高は韓国GDPの13%程度あり、景気に無視できない影響を与える。原材料の調達の再編にかかるコスト負担などを総合的に勘案すると、わが国の輸出管理制度の厳格化は韓国経済の下方リスクを高めるだろう。それを避けるには、在庫がある間に日韓関係が改善に向かう必要がある。
世界経済にマイナスと断じるのは早計
対韓輸出管理の厳格化が世界経済に与える影響は、それなりに慎重に考えていく必要がある。現時点で韓国が主張するように、わが国の対応がグローバル経済を混乱させると論じることは早計だろう。
米国政府のポンペオ長官は、電話会談の中で康外相の懸念表明に対して“理解”を示すにとどめたようだ。米国政府の言及はまだない。加えて、ハリス駐韓大使やスティルウェル国務次官補(東アジア・太平洋担当)も、日韓の仲裁を行う見解を示していない。米国が世界経済に与える影響は対応可能なものにとどまると考えている証拠と言えるだろう。7月に入り米国の株価が最高値圏で推移していることを見ても、わが国の制度見直しが世界経済に負の影響を与えるとは言いづらい。
また、世界の半導体需給は緩んでいる。昨年秋ごろから世界の半導体市場は急速に冷え込んでいる。背景には、中国経済の減速や世界的なスマートフォン販売台数の減少、データセンター関連の設備投資の一巡を受けた半導体需要の落ち込みがある。