仕事のために命をかけたら逆さまの話
【宮内】私もよくこう言うんです。「仕事なんて命がけでやりなさんな。そんな値打ちないよ。その代わり精一杯やりなさい」と。生活するために仕事をしているわけだから、仕事のために命をかけたら逆さまの話になるわけでね。有意義な人生を送るのが一人ひとりの願いであって、仕事はそのための手段です。ですから、そこに命をかけるのは変なんですよ。そこを間違えると深刻になってしまう。ともすると病気になってしまう。
【柳井】もっと楽観的に考えないと。僕はもう超楽観主義です。自分でいくら考えてもダメなことは、もうダメなんで(笑)。深刻になりそうなら、困ってることをぜんぶ書き出せばいいんです。そして、できることと、本当に自分や会社にとっていいことだけをやれと。人が深刻になるのは、正体がよくわからなくて不安を感じるから。書き出して自分に何ができないのかがわかれば、安心できます。
【入山】人を動かすうえで意識されていることはありますか。
【柳井】任せるしかないよね。トップがぜんぶ決めるわけにはいかないでしょ。事業がたくさんだったり人数が増えたりすると。
【宮内】森羅万象はわからないですからね。相手を見極めて任せることが大事です。「この人が言うなら、そのとおりやってやろうか」とか、「この人の話は8掛けで考えよう」とか(笑)、程度は違いますが、任さないと仕方がない。
【入山】任せるのはきっと勇気がいりますよね。
【宮内】勇気よりも相手のモチベーションを上げてやることが必要です。
【柳井】そのために管理のシステムがあるわけですよ。それを勉強するのがMBAでしょう。MBAも最近変わってきているというけど、どうですか。逆に入山さんに聞いてみたい。
【入山】実は最近私はMBAでも画一的な座学よりも志やパッションを学生に持たせたり、学生に何か「特別な経験」をさせることが大事ではないか、と考えています。実際、うちのMBAでは、熱のある経営者や起業家を招いて、思いを語っていただく授業を開いていて大人気ですね。