検察は「誠に申し訳なかった」と異例の謝罪

一連の報道によると、小林容疑者は過去にも服役しており、その粗暴さは県警内に知れ渡っていた。検察事務官が2月に小林容疑者の自宅を訪問した際にも、暴行を受けそうになっていた。収容時に暴れることは十分に予想できたはずである。

保釈中の実刑確定者を収容するのは、検察の仕事だ。しかし担当部署の人数は少なく、激しく抵抗する相手を取り押さえる訓練は受けていない。態勢や装備が不十分であり、今回の事態は予想外とはいえない。検察は態勢をしっかり見直す必要がある。

小林容疑者の逮捕を受け、横浜地検の中原亮一検事正は23日夕方に記者会見を開き、「地域住民、学校関係者、関係自治体に多大な不安を与え、迷惑をかけ、誠に申し訳なかった」と異例の謝罪を行い、検察の不手際を詫びた。

横浜地検は小林容疑者の逃走後、対策本部を設置した。だが、逃走に使われた車の通行履歴や小林容疑者の交友関係の捜査などは、すべて神奈川県警に頼ることになった。これも検察の態勢が不十分だからだ。

検察内部で意思疎通ができていない。当初は東京高検が収容を担当し、小林容疑者に電話で出頭を要請した。しかし「横浜地検の小田原支部にならば収容されてもいい」と言われ、東京高検は横浜地検と小田原支部に任せていた。その結果、逃走事件が起きた。

ゴーン氏の場合も逃亡と証拠隠滅の恐れを判断

保釈といえば、特別背任罪などの罪で起訴された日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(65)のケースが記憶に新しい。

東京地検は「身柄を拘束し続けて自白を強要する人質司法だ」との海外メディアの批判に屈することなく、ゴーン氏の逮捕、拘留、再逮捕を繰り返して捜査を続けた。

一方、ゴーン氏の弁護士らは東京地検の強硬な捜査に反発し、東京地裁に何度も起訴後の保釈を求め続けた。その結果、3月6日と4月25日の計2回、保釈が認められた。

東京地裁は保釈の条件として、事件関係者との接触や海外渡航の禁止、住居への監視カメラの設置、インターネット利用の制限などのほか、2回目の保釈では妻のキャロルさんとの接触も禁止にした。2回合わせて保証金は計15億円に上った。高額所得者の場合、保釈金は高くなる。

東京地裁は逃亡と証拠隠滅の恐れがあるかを判断したうえで、ゴーン氏の保釈を決めていた。振り返ると、東京地裁の判断は冷静だったと思う。