保釈制度は「行き過ぎている」と言えるか

ただ、保釈を認める傾向のあるいまの裁判所の姿勢も考察してほしかった。事件の真相を理解して罪があるか否かを判断する刑事裁判には、検察側と弁護側の双方に一定の時間が求められる。被告を保釈することによってその時間を与えようとする裁判所の開かれた姿勢は評価できると思う。

最後に産経社説はこう主張する。

「刑事司法の目的は社会の安全や公平性を守ることにある。行き過ぎた現行の保釈のあり方が、その目的に適っているとはいえまい。早急に見直す必要がある」

保釈制度が「行き過ぎている」と決めつけるのはどうだろうか。公器と言われる新聞の社説である以上、もう少し幅を持って主張してほしい。

「保釈を認める流れを押し戻すな」と朝日

朝日新聞の社説(6月25日付)は「失態踏まえ改善策探れ」との見出しを掲げ、後半でこう主張する。

「気になるのは、男が保釈された事実をとらえて、保釈の制度や運用全般を問題視する言説が、一部のメディアなどに広がっていることだ」

「日本では長期の身柄拘束が当たり前に行われ、人権を過度に制約してきた。だが近年、いくつもの冤罪事件や裁判員制度の導入を機に見直しが進み、保釈が認められる例が増えている。この流れを押し戻すような動きに賛成することはできない」

「この流れを押し戻すような動きに賛成することはできない」。産経社説とは正反対の主張である。朝日社説の言う「一部のメディア」とは、産経新聞を指すのかもしれない。

人権を重視してきた朝日社説らしさがにじみ出ている。ただ、「人権、人権」と書きすぎると、読み手はしらけてしまう。切実な問題であるからこそ、人権という言葉に頼らないでほしかった。

朝日社説は最後に「捜査・裁判上の要請と人権とのバランスをどこに求めるか。社会全体で冷静かつ着実に、検討を深めていかねばならない」と訴えるが、沙鴎一歩はこの部分には賛成する。

(写真=時事通信フォト)
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