ゆりやんレトリィバァの英語トークにすごみを感じた理由

この豊田氏同様、現地で一定の評価を得たのが、お笑い芸人のゆりやんレトリィバァのパフォーマンスと英語によるトークだ。6月11日にアメリカの「アメリカズ・ゴット・タレント」で過激な水着姿で出場し、笑いをさらったのだ。

ゆりやんが自身のインスタで現地での活動を報告

ゆりやんのすごみは、きわどいダンスだけではない。その前後の審査員とのやりとりの軽妙さ、切り返しのうまさにも表れている。

【男性審査員】「なんでそんな名前なの」

【ゆりやん】「リトリバーってわかる? ゴールデンリトリバーって犬いるわよね。私のネコの名前なの」 (中略)

【男性審査員】「友達でいよう」

【ゆりやん】「友達ね。OK。シェラトンホテル312……」

不合格(予選落ち)になった後も、舞台を降りて、ユーモアたっぷりに審査員に詰め寄るなど、終始、会場を笑いの渦に巻き込んだ。その堂々としたふるまい、当意即妙の切り返しなど日本人離れした肝の据わりっぷりなのである。

社長・豊田章男と、ピン芸人・ゆりやんの意外な共通点

豊田氏とゆりやん。不思議な組み合わせに思うかもしれないが、2人は英語で聴衆の心をつかむ極意を知っていると思う。海外でのパフォーマンスにおいて、重要なのは英語力ではなく、ネイティブスピーカーに「憑依する力」であるということだ。恥を恐れず、徹底的にまねをし、なりきる力だ。

豊田氏はそんなゆりやんと肩を並べるぐらいに、時に、「道化」となることを厭わず、捨て身になって「裸芸」「憑依芸」を演じることができるまれな経営者だ。安倍首相も同様だが、英語プレゼンでは、吹き込んでもらったネイティブ英語を耳で何度も聞き、練習をする。

こうした「パフォーマンス」に業界では、眉をひそめる人もいる。自動車業界の他社幹部からは「やりすぎ」「痛い」「かっこつけている」などといった声が聞こえてくる。

確かに、大げさなジェスチャーは海外では全く違和感はないが、国内の舞台では、若干、不自然に見える部分もある。国内では、例えば、手ぶりのカタチもボリュームも少しトーンダウンするなどの工夫をすることで、もっと自然な印象になるだろう。

しかし、あえてボリュームコントロールをかけない「パフォーマンス型」プレゼンは、彼の周到な計算に基づく戦略の一環でもある。さらに、専属のスタイリストを付け、眼鏡のフレームにまでこだわるショーマンシップ(見物客を喜ばせようとする心意気)は有名だ。