道化になることをいとわない豊田社長のコミュ力
自らが、「トヨタイズム」のエバンジェリストとなって、伝えていかなければならない――。その体を張る覚悟、多少の「恥」を恐れず、自分を道化にすることをいとわない豊田氏のコミュ力は大いに評価されるべきだろう。
一方で、これから先、同じスタイルだけをずっと続けていいとはいえないだろう。というのも、トヨタ自動車の社内には、すべての光を豊田氏に向け、偶像化を狙うきらいがあるからだ。本人の意図とは関係なく、周りの人たちが、忖度(そんたく)に忖度を重ね、すべての石ころも砂利もホコリも取り除いた「黄金の舞台」をつくることに躍起になっている――。そんな話も筆者のところに漏れ伝わってくる。
コミュニケーションの基本は「対話」である。そして、主役はあくまでも「聞き手」である。話し手が自分だけに光を集めようとすればするほど、影はぶ厚くどす黒いものになりやすく、利己視点のコミュニケーションは「自己陶酔」に変わりやすい。リーダーシップには「支配型」と「支援型」の2種類があると言われる。
強権的なリーダーシップは腐敗しすく、競合社の事例を見てもわかるように、歴史的に見ても良い結果を生まない。強くありながら、優しく聞き手の気持ちに寄り添う、というその原点に忠実に、さらに「コミュニケーションリーダー」として進化し、魅了する姿を見せていただきたいものである。
(写真=iStock.com)