過小評価できないファーウェイ制裁の影響度合い

想定外の修正内容に驚いたライトハイザーUSTR代表は大統領に中国の"ちゃぶ台返し"を報告した。5日、想定外の対応に怒ったトランプ氏は、10%にとどめていた第3弾の制裁関税の引き上げに加え、第4弾の制裁関税発動を示唆した。その後の閣僚級協議では合意がまとまらず、米国はさらなる圧力行使に打って出た。それが、中国の通信機器最大手ファーウェイへの制裁措置の発表だ。

米国の制裁により、ファーウェイの業績悪化は避けられない。同社の売り上げは、スマートフォンなどの消費者向けビジネス(48%)と、通信基地設備などキャリア向け(41%)からなる。売上高は約12兆円と、米国からの制裁によって経営危機に瀕したZTE(中興通訊)の8倍の大きさだ。また、世界各国の5G通信網の整備などにも影響が波及するだろう。

制裁発動を受けた各企業の対応の中でも、英アーム社がファーウェイとの取引停止を発表したマグニチュードは大きい。アーム社は半導体の省エネ設計に強みを持ち、米クアルコムをはじめ韓国や台湾の半導体メーカーは同社との関係を抜きにビジネスを続けることができない。

85%のシェア持つグーグルもファーウェイと取引停止

アーム社のテクノロジーはスマートフォンを動かすための心臓部分だ。ファーウェイ傘下の半導体企業であるハイシリコンもアームのテクノロジーを必要としている。ファーウェイは1年分の在庫を積み増しているとみられるが、スマートフォンや5G通信に欠かせない半導体設計技術にアクセスできない以上、同社の業績悪化は避けられない。

更に、アンドロイドOSを持つグーグルもファーウェイとの取引を停止する。これに対してファーウェイは独自に開発したOSである「鴻蒙(Hong Meng)」の商標登録を中国政府に申請し、今秋にもリリースを目指している。鴻蒙はアンドロイドとの互換性機能を備え、ファーウェイは自社製品の利用に問題はないと表明している。

アンドロイドは世界のスマートフォンOS市場で85%のシェアを持つ。すでに、わが国の大手キャリアは影響に配慮してファーウェイ製スマホの発売延期や予約中止を発表した。アジアの中古スマホ市場でもファーウェイ製品の買い取りが中止され始めた。ファーウェイが自力で制裁の影響を回避するのはかなり難しい。

また、ファーウェイは世界最大の通信機器シェアを誇る。欧州では価格の安いファーウェイ製の基地局などを用いて5G通信網の整備が進んでいる。米国の制裁は世界的な5G導入を遅らせ、経済活動を抑制する恐れがある。