「将を射んと欲すれば、まずその親を射よ」の時代

【柳川】実はそれで言うと、女の子たちの父親は「聖闘士星矢(セイントセイヤ)」(1986~89年放映)世代が多く、それを意識してはいます。

【原田】そうか、なるほど! 『聖闘士星矢』は宇宙と星座がモチーフ。「スタプリ」と共通要素がありますね。確かに、僕の小学校時代はクラス中の男子で『聖闘士星矢』にはまっている人が多かった。僕自身はなぜか『聖闘士星矢』には興味がなく、『キン肉マン』や『北斗の拳』のような、もっと男子っぽいものが好きだったからピンとこなかったけれど、確かに言われてみると僕、その世代だわっ!

【柳川】現在30代後半から40代前半の男性が『聖闘士星矢』世代です。1977年生まれの原田さんも、まさにど真ん中ですね。さらに言うと、20代後半から30代前半の女性、つまり母親世代は『セーラームーン』世代の可能性もある。

【原田】『セーラームーン』は僕世代よりはだいぶ下の世代のモノだけど、「旦那が年上」といった夫婦であれば、この構図に当てはまるかもしれないね。

【柳川】2作とも東映アニメーションでアニメ化した作品なので、それらを通過した世代が「スタプリ」の親世代だということは、企画当初からかなり意識していました。

【原田】将を射んと欲すればまずその馬を射よ、ではなく、その親を射よ、の時代に、しっかりと親世代の分析もスタートから意識してやっている点は本当に素晴らしいね。ただ、パパと娘の接点を作ることには成功しているけど、もっとパパをはめる仕組み作りにチャレンジしてほしいです。令和は新男性消費の時代ですから。ママと違って女児アニメの原体験がないパパでもはまるポイントや仕組みがあれば、もっとファミリー視聴やファミリー消費が増加するように思います。

女の子向けで「宇宙」というチャレンジの理由

【原田】もう一つのキーワード「宇宙かわいい」に話を移しましょうか。女の子向けで「宇宙」というのは、少しミスマッチというか、むしろ男の子のイメージに思えます。

【柳川】かなりのチャレンジなんです。実は私、意外に「宇宙=男の子」でもないんじゃないかなと思っていて。企画を出した時も、いろんな方から「男の子っぽくなりすぎるんじゃないか」という意見をいただきました。「星座」までならロマンチックなイメージですが、ロケットに乗って宇宙に飛び出して冒険まで行くとなると、かなり男の子っぽいんじゃないかと。そのバランスはすごく議論しましたね。

【原田】確かにここ数年、宇宙に興味のある若年女性が増えていて、「宙女(そらじょ)」や「宙(そら)ガール」なんて言葉も出てきているよね。宇宙っぽい柄の洋服やバッグもはやってきている。今の子供たちも男女ともに「妖怪ウォッチ」や「ポケモン」、「しまじろう」や「コラショ」、「おしりたんてい」と、性差のないコンテンツで育ってきているから、男女の差はもっと小さくなっている可能性があるね。

つまり、今まで男子向けとしてやっていたものが女子に受けたり、その逆もあり得る世代が出てきている、ということだね。最近は男子高校生なんかでも、韓流スターの影響で、普通にメークする男子が街でも増えてきている。今はまだ違和感のあるこの「男女逆転現象」が、令和の時代にはたくさん見られるようになる可能性が高いと僕は思っています。