自分の仕事が好きだからこそ、点と点がつながる将来を我慢して待てるのです。そのときに重要なのが、どんな仕事が好きで、どのような仕事が嫌いなのかという自分独自の価値基準、つまり教養を身に付けていることです。
頭を働かせ、突き詰めて考える
高度に発達したITのおかげで、私たちは膨大なデータを即座に入手できるようになりました。しかし、どんなにたくさんの情報や知識を得ても、考える力が備わっていなければ、それらの価値を判断する教養も身に付かないので、仕事に生かせません。
最も肝心なのは、「自分の頭だけを働かせて、物事を突き詰めて考える」という習慣を身に付けることです。PCもスマートフォンもシャットアウトして、自分の頭だけで考える。そうした時間をとれないでいる人が多い。
文明の利器の恩恵によって、現代人は、昔の人に比べて労働時間が大幅に減っています。考える時間が、本当はたっぷりあるはずなのです。しかし、便利な情報検索ツールに頼りきりになった結果、現在人は、自分で考えることを放棄するようになり、教養を喪失するという皮肉な成り行きです。
「衣食足りて礼節を知る」という格言があるように、ゆとりがなければ、教養を高めることはできません。一方で「小人閑居して不善をなす」という言葉もあります。要するに、余った時間をどのように有効活用して、教養を高められるのかを、今のビジネスパーソンは問われているのでしょう。
一橋大学大学院 国際企業戦略研究科教授
1964年生まれ。92年、一橋大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。一橋大学商学部助教授、同イノベーション研究センター助教授などを経て現職。『ストーリーとしての競争戦略』『すべては「好き嫌い」から始まる』など著書多数。