ボーナスは最高5000万円にも

中央政府の方針を受けて、地方政府レベルでも海外のハイレベル人材の招致に取り組んでいる。例えば、中国国内でよく知られている政策が深圳(シンセン)市の「孔雀計画」だ。2011年の計画スタート当時、一時金は80万~150万元(約1280万~2400万円)だったが、2016年から160万元~300万元に倍増された。この計画が奏功して、深セン市は「中国のシリコンバレー」と呼ばれるほど、イノベーション都市として急成長を遂げた。

2008年のグローバル金融危機で世界的に雇用環境が悪化したことに加え、中国政府も海外高度人材の呼び戻しに動いたことで、2000年代後半以降「ハイグイ」は急増し続け、2017年には48万1000人に達している。

海外で学んだ人材を呼び戻すだけではなく、国内においても民間企業を巻き込んでハイレベル人材の育成に力を入れ始めている。その代表格が貴州省だ。中国南西部の奥地にあり、経済発展が最も遅れた地域の一つだったが、国家級ビッグデータ総合試験区に選定され、現在ではグローバルなハイテク企業が集積する一大拠点へと発展を遂げている。

その貴州省は2016年、アリババグループと協力協定を結び、3年間で2500人のクラウドコンピューティング・ビッグデータの高度専門人材と、エンジニアなどの技術者1万人を育成する計画を打ち出した。翌17年アリババグループ傘下の「阿里雲計算公司」(アリババクラウド)は、「工業強省」を目指す貴州省が人材育成のために2013年に新設した大学「貴州理工学院」と、共同で「アリババ・貴州理工ビッグデータ学院」を開校した。

最先端の機器を揃えた施設を政府が用意

こうした人材育成の場は他にもある。2015年に開校した起業家育成のためのビジネススクール「湖畔大学」は学位取得のための大学ではないが、アリババの創業者・馬雲(ジャック・マー)氏が学長を務め、聯想集団(レノボ)や復星集団といった名だたる企業の董事長(会長)が幹部に名を連ねている。アリババのお膝元である浙江省杭州市に位置し、主に3年以上の経営経験がある起業家を対象としている。

これら国内外のハイレベル人材が起業しやすくするため、ハード面での環境整備も政府主導で進められている。2015年3月、国務院(日本の内閣に相当)から「衆創空間の発展と大衆によるイノベーション・創業の推進に関する指導意見」が公布された。

「衆創空間」とは、「大衆創業・万衆創新」を実現する空間のことであり、一般的にコワーキングスペースやメイカースペース、ハッカースペースなど、最先端の機器を揃え、さまざまな立場の人が利用できるワークスペースの総称として使われている。中央の政策に合わせ地方政府も積極的に支援に動いた。例えば、深セン市、上海市、北京市なども同年に関連政策を発表している。

政策効果は顕著に表れており、インキュベーション施設とそこに入居するスタートアップ企業数は、2015年に前年比でそれぞれ44.9%と29.4%増加している。