「今日お昼どう?」ができない人たち
【成毛】そこまでやっても、役員になれなかったら60歳で定年か。その先どうするんですか、そんな人たちは?
【大西】以前お世話になった退職した先輩から、先日年賀状がきまして。毎日のテーマが「キョーイク」と「キョウヨウ」ですって。これ、「今日行くところ」と「今日の用事」探し、という意味だったんですね。うまいこと言うな、と感心しましたが、やっぱり悲しくなりました。
【成毛】内務官僚である以上、名刺がなくなったらおしまい、という世界だものね。
【大西】SNSも使いこなしていないし、定年後のオジサンが、誰かに突然電話をして「今日お昼どう?」みたいなこともなかなかできないじゃないですか。毎日悶々とするわけで、大変ですよ。
SNSより「たばこ部屋」で情報交換
【成毛】SNSは老後ほど、重要ですよね。
【大西】ただ、あくまで会社のなかで、のし上がっていきたいだけの人にとってはSNSは不要なんですよね。逆に、外部と遮断されていることこそステータス、というか。僕の同期たちもいずれそうなっていくのかな。
【成毛】きっと半分くらいはそうなんでしょうね。SNSをバリバリこなしている社会部長とか。インスタグラマーな経済部デスクとか、想像できないもんね。規則もあるかもしれないけれども。
【大西】SNSより、狭いたばこ部屋でボソボソと行う情報交換の方が大事。それが新聞社ですから。
書評サイト「HONZ」代表
1955年、北海道生まれ。79年、中央大学商学部卒。自動車メーカー、アスキーなどを経て、86年マイクロソフト(株)に入社。91年、同社代表取締役社長に就任。00年に退社後、投資コンサルティング会社(株)インスパイアを設立、代表取締役社長に就任。08年、取締役ファウンダーに。10年、書評サイト「HONZ」を開設、代表を務める。元早稲田大学ビジネススクール客員教授。著書に主な著書に『面白い本』『もっと面白い本』(岩波書店)、『定年まで待つな!』(PHPビジネス新書)、『amazon』(ダイヤモンド社)など多数。
大西康之(おおにし・やすゆき)
ジャーナリスト
1965年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。日本経済新聞入社後、欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集員、日経ビジネス編集委員などを経て16年4月にジャーナリスト、ノンフィクションライターとして独立。著書に『稲盛和夫最後の闘い―JAL再生にかけた経営者人生』(日本経済新聞出版社)、『ロケット・ササキ―ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮文庫)、『東芝解体 電機メーカーが消える日』(講談社現代新書)、『会社が消えた日―三洋電機10万人のそれから』(日経BP社)などがある。