慢性的な非常時に生まれた「令」の意味

ところが、世界的には2001年9月11日からかもしれませんし、日本的には2011(平成23)年3月11日からかもしれませんが、この世は慢性的に非常時になったのです。ずっと平時がない。したがって平時とのコントラストが付かない。死の跳躍のときがとりあえずずっと繰り延べられているかのような、長い長い危機の時代なのです。

佐藤優、片山杜秀『平成史』(小学館)

昭和史とも「オウム史」とも似ているようで似ていない、平成後期史・ポスト平成史の特性です。オウムの「31」は死刑という死で切断されて結ばれたが、平成の「31」は崩御という死を伴わずに、グラデーションたっぷりに次代へと移行します。同質の危機の時代がしばらくは、いや、もしかして永遠に、続くのでしょう。

そういえば、総理大臣がテレビ演説において、自らが元号制定に与えた影響力を誇示するような調子で、元号の言葉としての意味をたっぷり説明するという、前代未聞のかたちで発表された新しい元号の、その画数は、「31」を裏返した「13」です。

だからどうしたということではないのです。ともかく、跪き平伏すという意味をいちばんにはあらわすがゆえに、字の内在する高圧性を避けたいということで、元号には使われることがなかったのではないかとも思われる「令」という漢字を、初めて入れた元号の世を迎えることになりました。よくよく注意して生きたいものです。

片山杜秀(かたやま・もりひで)
慶應義塾大学法学部教授
1963年、宮城県生まれ。思想史研究者。慶應義塾大学法学部教授。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。専攻は近代政治思想史、政治文化論。音楽評論家としても定評がある。著書に『音盤考現学』『音盤博物誌』(この2冊で吉田秀和賞、サントリー学芸賞)、『未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命』、共著に『現代に生きるファシズム』などがある。
(写真=時事通信フォト)
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