「会社側提案」が無条件に通る時代は終わった
2014年以降、導入されたスチュワードシップ・コードによって、生命保険会社や年金基金などの機関投資家は、加入者の利益を第一に議決権行使を行うことが求められるようになった。この結果、会社側提案に無条件で賛成できなくなったのだ。
さらに、個別の議案での議決権行使の内容を開示する機関投資家が激増。会社側提案だからといって株主の視点から疑義のあるものには賛成しない傾向が強まった。例えば、リクシルの主要株主でもある第一生命保険の場合、2018年4月から6月に開かれた株主総会1799社のうち会社提案について1件以上反対した会社は204社にのぼった。何と11.3%である。
今回のように海外投資家が厳しい目を向ける中で、リクシルの会社側提案に日本の機関投資家が無条件で賛成することはありえなくなっているのだ。
リクシルの指名委員会による会社提案が、瀬戸氏らの株主提案よりも、機関投資家からみて優れているものにならない限り、会社提案が否決される可能性は十分にあるとみていいだろう。
潮田氏はCEO復帰を目指す瀬戸氏の経営手腕に対する批判を強めているが、機関投資家からみて瀬戸氏より優れた人物を会社側が提案できるかどうかが焦点になる。これまで不信感を買った潮田氏の影が見える人事案が出てくるようなことがあれば、機関投資家が一斉に反発するのは必至だ。
経済ジャーナリスト
1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年に退社、独立。著書に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)、共著に『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。