「この活動は自分の病院の看護師を確保することが目的でやっているのではありません。今の医療現場を見て、研修を通して技術を思い出し、臨床に戻ってきてほしい。看護師は地域にとっても日本にとっても財産ですから」と、同病院副院長で、看護部長の熊谷雅美氏は説明する。

前述のスーパーナースでは、東京大学医学部附属病院と共同開発した「Re-ナース」プランという再就業支援プログラムを実施している。文部科学省の平成19年度「社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム」委託事業に選ばれたため、受講料は900円(5日間コース)か1800円(10日間コース)。東大病院の設備を使い、同病院の職員による安全対策や感染対策などの座学や、採血や注射、救急対応などの演習を受けられる。これまで2回実施し、25人の受講者のうち約7割が実際に医療現場への復帰を果たしている。

東部病院やスーパーナース以外の病院や団体でも、潜在看護師の現場復帰を目的とした研修が行われている。これらは、潜在看護師の復帰のハードルを下げるきっかけとなる。

一方で、看護師の離職率を下げるために重要となるのが、病院側の受け入れ態勢である。

日本看護協会の調査によると、07年度に採用予定数の看護師を確保できた医療機関は全国平均で約7割に留まっている。

そんな中、東部病院では「多くの看護師が、なぜ現場を離れてしまうのか」に着目、職場環境を整えることで500人規模の看護師を採用し、昨年3月に開院に至った。離職率も5~6%と、全国平均の半分以下に留まっており、看護師不足に悩む医療業界で注目を集めている。

「日々医療が進歩する中、安全を担保しながら新しい医療を行うには、やはり看護師の力がカギとなります。しかしながら、看護師の採用には今でも苦労しています。(入院患者と看護師の比率は)7対1を維持していますが、看護師一人ひとりにかかる責任の重さを考えると、まだ人数が足りません」と熊谷氏は語る。

同病院の看護師は、今年4月には約530人に達するというが、開院時は500人の目標に達することができず、一部の病棟は閉めたままで開院を迎えた。採用に苦労する中で熊谷氏は、大きな疑問を持った。「なぜ、一度臨床の現場に出た看護師が現場を離れてしまうのか? 現場にどんな問題があるんだろうか? それを知りたいと思いました」(熊谷氏)。