不妊治療と仕事の両立に悩む女性社員にできることは
【3:企業に期待される施策とは】
「不妊白書2018」によれば、職場に不妊治療をサポートする制度が「ない」と答えた人は84.3%に上ります。制度が「ない」と回答した女性が求めるサポートとして、多かったのは「就業時間制度」(73.3%)、「休暇・休業制度」(73.1%)です。不妊治療を続けながら働くために、働く時間や休暇の面での配慮を求めていることがわかります。
一方、職場に不妊治療をサポートする制度が「ある」と答えた人からも、制度内容がニーズとかけ離れていることが指摘されています。
不妊治療のために使いやすい「休暇・休業制度」については、「職場にすでに整備されている」と回答した女性が63.8%であったのに対して、「(今)職場に求めている」という女性が73.1%でしたので、現状とのギャップはそれほど大きくありません。
ところが、女性が最も求めているサポートである、働く時間を調整できる「就業時間制度」については、「すでに整備されている」と回答した女性はわずか5.5%であったのに対して、「(今)職場に求めている」という女性が73.3%もいて、ニーズと現状に大きなギャップがあります。
その他、「不妊治療費に対する融資・補助」、「再雇用制度」、「支援要員の雇用制度」なども、働く女性のニーズと、企業が整備している現状に大きなギャップがありました。
最近は、大手企業を中心に、不妊治療のための長期の連続休暇制度の整備など、不妊治療を行う女性を支援する制度の整備が広がっています。筆者が企業に聞き取っている印象では、不妊治療を行う女性の支援が制度化されているケースは少なく、個別の相談を受けて対応しているケースが多いようです。
不妊治療は、介護や育児に比べて心理的に言い出しづらいということに配慮し、使いやすい制度を整備していく必要があると考えます。
相談する窓口や担当者が明確になっていると精神的負担が軽減
Fine理事の野曽原氏は言います。
「制度を整備するにはコストもかかりますが、現状の制度条件を見直してみる、あるいは、不妊治療を対象として条件を拡充するなど、さまざまな方法があります。実は、制度がなくても、相談する窓口や担当者が明確になっていたら、当事者の精神的な負担が軽減されるケースも多いのです。多くの企業が柔軟な姿勢を持って、一歩前に進めてほしいと思います」
働き方改革の課題が山積みの企業のなかには、不妊治療を受ける女性の数が相対的に少ないため、制度整備に優先順位が下がってしまうところもあるでしょう。しかし、野曽原氏の話を踏まえれば、制度の拡充が難しい企業においては、まず相談窓口の設置を行うだけでも、不妊治療と仕事の両立に悩む女性従業員の助けにはなるのではないでしょうか。
不妊治療と仕事の両立の課題は、最近、ようやくメディアなどで取り上げられることが増えてきましたが、企業の取り組みは十分とは言えません。今後、仕事と家庭の両立支援の一環として、不妊治療という課題にも目を向け、取り組みを拡充する企業が増えていくことが期待されます。