「働かないおじさん」と若い世代から揶揄され、リストラのターゲットとなることも多い中高年男性社員。彼らの本音はどんなものなのか。日本総合研究所の小島明子さんが同社の調査に基づき、出身大学の偏差値と幸福度について分析した――。

※小島明子『中高年男性の働き方の未来』(きんざい)の一部を再編集したものです。

70歳まで働く人が増加、中高年男性の心の内・腹の内

最近、都市部の大企業に勤める中高年男性の働き方に対する社会からの関心が高まっていると感じます。

2021年4月には改正高年齢者雇用安定法が施行されたことによって、企業に対する70歳までの雇用確保措置が努力義務となりましたが、特にバブル期に入社している男性は数も多く、管理職層の多くも中高年男性です。

就業継続を希望する中高年男性については、役職定年などを機会に意欲が低下するケースは少なくなく、今後の活躍の在り方が問われています。拙著『中高年男性の働き方の未来』(きんざい)では、日本総合研究所が実施した高学歴中高年男性に関する調査を踏まえて、個人、企業、社会全体に対して、中高年男性の今後の活躍の施策を提言した。

本稿では、本書のなかのコラム「中高年男性の学歴と幸福度」及び「高学歴中高年男性のホンネ」を中心に抜粋し、紹介してみたい。

1.高学歴中高年男性の実態

日本総合研究所では、民間企業かつ東京都内のオフィスに勤務し、東京圏に所在する4年制の大学あるいは大学院を卒業した中高年男性45~64歳に焦点を当て、2019年に意識と生活実態に関するアンケート調査を実施しました(以下、「日本総合研究所の調査」)。

※GMOリサーチの調査パネル2000人から回答を受領し、レポート集計対象は、出身大学の回答があった1794人。内訳は、45~49歳(432人)、50~54歳(447人)、55~59歳(454人)、60~64歳(461人)である。

調査では、大卒以上の男性を高学歴と定義し、大学難易度区分は全回答者の卒業大学の大学入試偏差値の四分位数を計算し、

学歴区分A=最小値~第1四分位数に該当するサンプル
学歴区分B=第1四分位数~第2四分位数(中央値)
学歴区分C=第2四分位数(中央値)~第3四分位数
学歴区分D=第3四分位数~最大値

とそれぞれ表記しています。大学難易度が最も高いグループはDであるため大学の難易度は、D(大学難易度が最も高いグループ)>C>B>Aの順になっています。

調査の中では、大学難易度が高いグループほど従業員規模1000人以上の企業に勤めており、中小企業に勤務をしている男性は少ないという結果が得られています。学歴区分A~Cにおいては、従業員規模1000人以上に勤める男性は、約3~4割の間にとどまっていますが、学歴区分D(最も高学歴)になると、その割合が約6割に達しています。

男性の既婚率においては、学歴区分A~Cまでは約7割程度であるが、大学難易度区分が最も高いグループのD区分となると、約8割にまで増え、他のグループより突出して高くなっています。バブル時代には、女性が結婚する相手として望まれる条件としては、「高学歴、高収入、高身長」という言葉を耳にした方も多いのではないでしょうか。学歴区分Dは、大企業勤めも多く、高収入になる可能性が高い。高学歴、高収入という条件があてはまりやすい学歴区分Dの男性の既婚率が非常に高いのは、結婚相手として、女性に人気があったことの表れなのかもしれません。