声優としての能力がなければ「誰の記憶にも残らない」

しかしそれ以上に考えなければならないのは、先述したとおり、やはり声優として一人前になることです。

そもそも現在アイドル声優として活躍している人たちも、そのきっかけとなるアニメやゲームのタイトルの役を勝ち取り、声優としての実力を認められた上でステージに立っている。そのことを忘れてはなりません。ルックス、歌唱力、ダンス。それらを熱心に磨いたところで、アイドル声優にはなれません。むしろ「アイドル」を志していることになってしまいます。

ここで一度立ち止まって考えてみましょう。本来求められる声優としての能力を磨くことを怠れば、一体どんなことが起こるでしょうか?

もしかすると、持ち前の華やかさや天賦の才で、一瞬の輝きは手に入るかもしれません。しかし声優としてのあなたの「声」は、はかなく消えて、誰の記憶にも残らないはずです。

ファンの多くは「キャラクター」に愛情がある

このことは、声優を応援してくれるファンの心理を考えてみると分かりやすいかもしれません。

声優のファンの多くは、そもそも作品の「役」「キャラクター」に対しての愛情があり、その声を担当する声優へ愛情を投影している場合がほとんどです。だから、声優がその作品のキャラクターに言霊を込めて演じない限り、誰も魅了することはできず、応援もしてくれないでしょう。

さらに言えば、もしファンを獲得できたとしても、キャラクターがあってのあなたの「声」であり、多くの場合、その人気はあなたという存在だけに向けられたものではないはずです。しかし、昨今の声優人気の高まりの中で注目を浴びる機会も増えているからか、そうした事実を理解するチャンスが少なくなってしまいました。

しかも声優のファンは、多くのコンテンツに触れ、非常に感覚が研ぎ澄まされているので、中途半端な演技や覚悟はすぐに見透かされてしまいます。何とか人気を得たとしても、一度失敗をしてその期待を裏切れば、なかなか同じステージに戻るのが難しい時代になっているのは、芸能人と同様で、よくお分かりのことと思います。