【加藤】全国で100社です。いまは関東関西で、北は秋田、南は鹿児島まで協業先がいますが、今後はさらに地域を広げていきたいです。

【田原】競合はあるんですか。

【加藤】全国の町工場が協業先であると同時に競合になりえます。ただ、他社から案件を奪っているという認識はありません。私たちがやっているのは再配分。丸投げされて得意・不得意なものをぜんぶやるのではなく、それぞれが得意なものだけができる状況にするので、板金屋さんにとってもメリットが大きい。私たちは板金屋さんに黒字保証をして発注していて、協業先の多くは5~10%ほど利益率が改善しています。

【田原】そこがよくわからない。板金屋さんが儲かって、キャディもマージンを取るわけでしょう。発注側にとっては値上げにならないの?

【加藤】お客様のコストは平均25%下がっています。一見矛盾しているように思えますよね。でも、町工場は得意なものほど人件費などの原価を抑えられます。そのためたとえば同じ商品でも、得意な町工場は1万円、不得意な町工場は5万円で受注したりする。そこで最適配分を行えば、町工場に黒字保証しつつお客様のコストも下げられるわけです。

【田原】今後の事業展開はどうする?

【加藤】板金以外もやっていきます。すでにテストで始めているのが切削加工。金属や樹脂の塊を削って部品を作る分野で、日本で4兆~5兆円の市場があります。さらに電子部品など、調達の製品カテゴリーを順次、拡充していく予定です。また、いずれは調達分野だけでなく、町工場の生産管理やファイナンス、物流を支援していくことも考えています。

【田原】町工場は後継者難で悩んでいますね。加藤さんたちのサービスで、何かいい影響はありますか?

【加藤】2つの貢献ができると思っています。まず1つは直接的で、自動化することで、人数が少なくても回せるようになること。そしてもう1つは、製造業のイメージを変えて、人材が来る業界にすることです。アップルは製造業ですが、イケてる印象があるから、その下請けまで含めて人を採用しやすい。同じように、町工場もスマートでかっこいいんだという空気感をつくっていけたらいいなと。

【田原】事業の拡大期待してます。

田原さんから加藤さんへのメッセージ

東大の松尾豊教授に「日本は人工知能で3周遅れ」という話を聞いたことがあります。なぜ日本が遅れているかというと、スタンフォードやMITで学んだ優秀な研究者が日本に来ないから。トヨタやパナソニックは、その危機感からシリコンバレーに研究所を作りました。

イノベーションが100年起きていないといわれる「調達」で革命を起こそうとしているのが加藤さん。まさにトップエンジニアと組むことで新しい風を吹き込もうとしている。古くて変わらないと思われていた世界こそ、変化を起こしたときのインパクトは大きい。頑張ってもらいたいですね。

田原総一朗の遺言:古いからこそ変える価値がある

(構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩)
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