「相対的な幸せ」を競うと不安は無限に続く

さて、ここまで述べてきたマウンティング・ゴリラの生態を聞いて、あなたは心から笑えただろうか――? 「いるいる、そういう人」と笑いながらも、心の片隅で、こっそり自分の胸に手を当ててはいなかっただろうか?

私は思うのだが、私自身も含め、誰もが自分の中に大なり小なりマウンティング・ゴリラを住まわせているのが実態ではなかろうか。それはそれでいいのである。承認欲求も、まぎれもない人間の欲求の一つだ。ただ、自分の中のマウンティング・ゴリラに気づいたら、成長し巨大化する前に、ここでいくつかのことを知ってほしい。

まず、人が生きる上で欲求や価値を感じるものは、100年前にマズローが唱えたように5つなんてものではなく、少なくとも下記のように10個くらいはある、ということだ。

▼新・10大バリューレバー
(1)生理的欲求、安全
(2)闘争・競争
(3)愛情・帰属
(4)承認欲求
(5)貢献欲求
(6)学習・成長
(7)遊び(没頭・熱狂)
(8)認知欲(哲学・信仰)
(9)美術・芸術(感動)
(10)生きがい

私はこれを、価値を感じるレバー「新・10大バリューレバー」と名付けた。この10個は私がまとめたものだが、これ以外に自分なりのバリューレバーがある方もいるだろう。いずれにせよ、自分の人生に「価値がある!」と感じさせるものは承認欲求ただ1つ、という方は少なく、多くの方は複数あてはまるのではないだろうか。その組み合わせや優先順位から、あなたの「幸福関数」が見えてくる。

「幸福度」を上げるための計算式

マウンティング・ゴリラは、生きる目標をひたすら「社会的承認欲求」に絞りがちだ。そうなると、他人の幸福度が低いほうが自分の幸福度が上がる、という悲しい事態が起きる。

そうではなくて、まずは「承認欲求以外にもたくさん、重要な価値ってあるよね」と気付いて認め、「幸福関数」に入れる欲求を多様化することが必要だ。

そして、さまざまなバリューレバーを意識したうえで、「自分の幸福関数を、他人の幸福度で割らない」という決意が、幸福の絶対値を高めるために重要なのである。

ムーギー・キム(むーぎー・きむ)
ビジネス書作家
1977年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA(経営学修士)取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門や外資系戦略コンサルティングファーム、外資系資産運用会社で活躍後、アジア太平洋地域でのプライベートエクイティ投資ファンドに参画。金融・人材採用/研修・ブルーオーシャン戦略の専門家として執筆を行っている。
(写真=iStock.com)
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