「不便」「手間がかかる」「楽しくない」を破壊する

アマゾンが金融産業にもたらした破壊的なインパクトをシンプルに表現するなら、「これまで当たり前でなかったことが当たり前になった」というものです。

田中道昭『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』(日経BP社)

今やあらゆる業界で、このような変化が生じています。旧態依然とした古い業界においては、「不便」「手間がかかる」「時間がかかる」「人がやる」「フレンドリーでない」「楽しくない」「取引していることを意識させられる」といったことが「当たり前」でした。

それは金融だけではありません。小売にも、広告業界にも、出版業界にも言えること。あえていうなら、ほとんどすべてのリアルな業種に当てはまります。

ところが、カスタマーエクスペリエンスの追求を自家薬籠中のものとするテクノロジー企業が、その「当たり前」を反転させてみせました。オンラインにおいては「便利」「手間がかからない」「時間がかからない」「わかりやすい」「自動でしてくれる」「フレンドリー」「楽しい」「取引していることを意識しない」といったサービスが当たり前です。

今後、あらゆる業界でデジタルトランスフォーメーションが進んでいく中、このような新しい「当たり前」が浸透していきます。アマゾンは、そのようなデジタルトランスフォーメーションの先導役と言えるのです。

田中 道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略、及びミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)などを歴任し、現職。主な著書に『アマゾンが描く2022年の世界』『2022年の次世代自動車産業』(以上、PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『アマゾン銀行が誕生する日 2025年の次世代金融シナリオ』(日経BP社)『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)などがある。
(写真=iStock.com)
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