「生徒会は楽しい」と話す現役生

現役生徒の声も紹介しよう。生徒会長の小野勇樹君(特進Aコース2年)と副会長の中嶋歩花さん(同コース1年)だ。茨城県鹿嶋市出身の小野君はサッカー部に所属し、高萩市の寮で生活する。中嶋さんはダンス部に所属し、福島県いわき市の自宅から電車で通学する。

「寮の先輩が前年の生徒会長だったので、その姿に憧れて生徒会の活動を始めました。将来は大学に進む予定ですが、父が飲食店を経営しており、ゆくゆくは店を持ちたい」と話す小野君。「生徒会のイベントで、さまざまな人と出会うのも楽しい」と笑う。

中嶋さんは、「英検、書道、ネイルアートをやってきて、いろんなことに興味があります。小2と幼稚園年長のいとこがかわいくて、将来は大学に進み保育士になりたい」と話す。

「最初は寮生活がイヤで、1カ月間は転校の情報を調べていました」と、小野君は正直に明かす。週に3回、昼休みに集まる生徒会の活動は、面倒ではないのかと聞いたが、「『面白そうだな。ガッツリやろうか』の意識で取り組んでいます」との声が返ってきた。

大学進学を目指す2人だが、成績はふつうだ。それでも「まだ2年と1年なので、これから伸びていきます」(進路指導部部長の栗原英明氏)と指導教員も温かく見守る。

「GSコース」成功は意識改革もカギ

現在、同校は次の計画に取りかかる。豪州やインドの学校と連携して国際交流を進める一方、新たに「GS(グローバルサイエンス)コース」を設置する準備を行う。理系を中心にした学業で、一部には人文科学や社会科学も取り入れる。最近はGSコース設置に乗り出す学校も多い。

だが筆者は、教職員がさらなる意識改革をしないと、目標は達成できないと思う。十数人の教職員と接したが、総じて受け身の姿勢が目立つ。今の成功が、今後の成功につながる保証はない。

世間で「優良企業」と呼ばれる会社ほど、業績好調でも「このままではダメになる」と感じて、次の一手に足を踏み出すタイプが目立つ。キーワードは〈独自の戦略性があるか〉だと思う

ある教員は、自校を「本当の進学校への道は、山登りにたとえると4合目程度」と評価した。山登りも、高地になればなるほど状況も厳しくなる。教職員が話す「県北から革命を起こす学校」を実現するために、あえて厳しいエールを送りたい。

高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。
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