人口減が続き、活気を失いつつある茨城県日立市で、明るいニュースをもたらしている高校がある。明秀学園日立高校だ。野球部は甲子園、サッカー部は全国大会に出場するほか、学業面でも国公立大学に40~70人が合格するなど実績を出している。生徒数はこの10年で1.5倍に増えた。それまで“底辺校”だった同校は、なぜ生まれ変わることができたのか――。(前編/全2回)
明秀学園日立高校の外観(筆者撮影)

活気がない、「日立製作所」のおひざもと

茨城県日立市は、日立製作所の発祥地であり、企業城下町としても知られる。「日製」(にっせい。地元では同社をこう呼ぶ)は現在の経団連会長・中西宏明氏(同社取締役会長)を輩出し、最近の業績は好調だが、おひざもとの同市は元気がない。

日立市の人口は1983年の20万6260人をピークに減少に転じ、最新調査では17万8375人(2018年12月1日現在の常住人口)と、四半世紀で14%も減った。日立グループ企業を中心とした雇用の縮小、商業の衰退、山沿いの住宅の居住減が原因と言われる。JR日立駅に降り立つと、洗練された駅舎・駅前ロータリーの充実ぶりと、駅前を歩く人の少なさのギャップを痛感する。

だが、そんな土地に気を吐く私立高校がある。明秀学園日立高校(以下、明秀日立)だ。サッカー部や硬式野球部は全国大会に出場し、国公立大学に41人(2017年度。16年度は72人)も合格する。前身は1925年に創設された助川裁縫女学校で、旧校名は日立女子高。1996年から共学の現校名となったが、「卒業生が誇りを持てない学校」だったという。なぜ、そんな高校が、教育関係者の注目する高校に生まれ変わったのか。現地を取材した。

今年も高校サッカー選手権に出場

現在の明秀日立は「スポーツが強い」と「進学実績がめざましい」の二面性を持つ。本稿ではスポーツに焦点を当て、サッカー部、硬式野球部、ゴルフ部の代表に集まってもらった。

高嶋修也くんはサッカー部主将として、2018年12月30日から開催される「第97回全国高校サッカー選手権大会」(昨年同校はベスト8)に茨城県代表で出場予定だ。ポジションはDF。専門誌では「関東屈指のCB(センターバック)」と写真付きで紹介される。

サッカー部主将の高嶋くん(筆者撮影)

「この学校を選んだのは、Jリーグの鹿島アントラーズのユースに昇格できなかったからです。実技は合格したけどメディカルチェックで不合格でした。それならと、茨城でサッカーの強い明秀日立に進学しました。将来はアントラーズに戻り、トップチームに上がりたい」

卒業後は、法政大学に進学予定。実力を高めて鹿島に再入団、レギュラー定着という夢を描く。