したがって、昨年夏の平均気温が「平年」より1.0℃上昇したので、今年1~3月の実質家計消費は平年に比べ▲0.9%×1.0℃=▲1.0%程度、金額にして▲5691億円も押し下げられる可能性があることがわかった。
ただし、個人消費が減れば輸入も減ることから、GDP全体では個人消費の落ち込みほどは減らないが、それでも同時期の実質GDPは同▲0.3%(▲3464億円)程度押し下げる計算になる。
なお、「前年比」での影響を見れば、昨年夏の平均気温が前年より+0.4℃しか上昇していないため、今年1~3月期の実質家計消費は前年比で▲0.9%×0.4℃=▲0.3%(▲1930億円)程度、実質GDPの押し下げが同▲0.1%(▲1175億円)程度にとどまる計算になる。
大量飛散と値上げラッシュのダブルパンチ
データ数が十分でないため、推計結果は幅を持ってみる必要があろう。しかし、花粉の大量飛散はわれわれの身体だけでなく、日本経済にもダメージを与える可能性があるといえよう。また、今春の花粉大量飛散により新規の花粉症患者が増加すれば、悪影響がさらに拡大する可能性もある。
以上を勘案すれば、花粉の飛散動向次第では、景気後退の瀬戸際といわれている日本経済に、花粉の大量飛散が思わぬダメージを与える可能性も否定できない。特に足元の消費動向については、値上げラッシュ等による消費者心理の悪化等マイナスの材料が目立っている。したがって、今後の個人消費の動向を見通す上では、花粉の大量飛散といった思わぬリスク要因が潜んでいることには注意が必要だろう。
第一生命経済研究所経済調査部 首席エコノミスト
1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。内閣府経済財政諮問会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。