EPA発効に乗じてスーパーやレストランなど各所で欧州産のワインやチーズなどを対象としたEUフェアが催されている。確かに関税が撤廃、もしくは削減された分、欧州産の農産物、食料品は安くなる。また衣料品の関税が即時撤廃されたので、高級ファッションブランドなども安く買えるようになるだろう。

しかし内外価格差の元凶は関税ではない、ということを日本の消費者は理解しておくべきだ。たとえばワイン。ワインの関税は1リットル当たり125円(または15%のどちらか安いほう)。一般的な750ミリリットル瓶のワインで関税は約93円。つまり関税が撤廃されても1本93円程度しか安くならないのだ。ちなみにこの関税は安物でもヴィンテージワインでも変わらない。

高値で販売されている理由に、1本93円の関税は関係ない

私の好きなイタリアワインにルーチェの「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」がある。ルーチェはイタリアのトスカーナ地方にあるワイナリーで、「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」はサンジョヴェーゼという品種のブドウ100%でつくられたワインだ。

とてもエレガントで洗練された味わいのトスカーナワインだが、これが現地では19ユーロで売られている。1ユーロ=130円とすると93円の関税を足しても2600円くらい。イタリアからの輸送費を乗っけて3000円がいいところだろう。では実際、このルーチェの「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」が日本国内でいくらで売られているか。楽天市場で最安値を調べたら1万8000円だった。

ルーチェというワイナリーも、「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」というブランドもワイン通の評価は高く、高級ワインの1つにも数えられる。しかし、1万8000円の味かと問われれば、私はそう思わない。実際、現地では3000円以下で売っているのだ。

そういうワインが日本で高値で販売されている理由に、1本93円の関税は関係ない。これは日本の流通の構造的な問題であり、一手に輸入して国内販売を独占している輸入代理店とか輸入元が価格をつり上げているのだ。このシステムを壊さない限り、内外価格差は縮まらない。