ワインの造り方は太古の昔から現在まで、どのように変遷してきたか。ワインスペシャリストの渡辺順子さんは「8000年前のワインの壺が見つかったジョージアは、ワイン発祥の地として現在最も有力視されている。当時と同じ手法によりジョージアで生まれたのが、日本でも人気が高まる『オレンジワイン』だ」という――。

※本稿は、渡辺順子『「家飲み」で身につける 語れるワイン』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。

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写真=iStock.com/Mohit Raheja
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「オレンジワイン」の誕生は新石器時代まで遡る

最近よく耳にする「オレンジワイン」は、まるでオレンジから作ったような色味と独特な風味で人気上昇中のワインです。

もちろんオレンジから作ったものではありません。「白ぶどう」から作られた世界最古のワインなのです。

その誕生は古く、新石器時代まで遡ります。

ワインの誕生の時期や場所については諸説あります。

世界最古の文明と言われるメソポタミアやエジプト、イスラエルやギリシャなどが「我が国こそワインの起源」とこれまで名乗りを上げてきた中、現在、発祥の地として最も有力視されているのは「オレンジワイン」が生まれたジョージアです。

渡辺順子『「家飲み」で身につける 語れるワイン』(日本経済新聞出版)
渡辺順子『「家飲み」で身につける 語れるワイン』(日本経済新聞出版)

長年ワインの歴史を調査している米国科学アカデミーは、ジョージアで8000年前のワインの壺が見つかったと発表しました。300リットルのワインが貯蔵できる素焼きの壺など、歴史を揺るがす品々が発掘されたのです。

ジョージア国立博物館とトロント大学の共同プロジェクトで発掘が進められていた2015年、ジョージアの首都トビリシから南へ約30~40キロ、小高い丘の一角に円形の家が立ち並ぶ村の跡地を発見しました。

同時に土の中に埋め込まれていた大きな壺の破片が掘り起こされ、これが世紀の大発見となりました。それまで最古と思われていたイランのザグロス山脈で発見されたワインの土器よりも1000年も前のものが見つかったのです。

壺の内側には、ワインだけが併せ持つ4つの酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸の付着、さらにぶどうの装飾が施された壺の外側にはぶどうの花粉が確認され、はるか昔にワインが造られていたと確信されました。