「むかつく」「びびる」は記述問題で書いてもいい

その一方で、「むかつく」「びびる」は記述使用を認めてもよいのではないかと考えている。なぜなら、この2語は長らく使われ続けてきた心情語だからだ。

「むかつく」を語源から辿ってみよう。平安時代後期もしくは室町時代から使用されていることばで、当時は「吐き気をもよおす」といったように「胃がむかつく」からくる表現だった。そして、江戸時代の頃から現在の意味に近い「腹が立つ」という意味に転じるようになったとされる。

「びびる」もその起源は古い。平安時代末期、源平合戦の「富士川の戦い」の際、陣をひいていた平家が小鳥のいっせいに飛び立つ音を「敵(源氏)の数多くの鎧がびんびんと響いている」ように聞こえたために、全員が一目散に逃げ出した。この音のことを「びびる音」と言うようになり、その平家の無様(ぶざま)な様子から「びびる」は「おじけづいてしまう気持ち」を意味するようになったと言われている。

試験に書ける心情語を子供に覚えさせるために親がすべきこと

矢野 耕平『13歳からの「気もちを伝える言葉」事典 語彙力&表現力を伸ばす心情語600』(メイツ出版)

子どもたちには多くの心情語を身につけてほしい。そのためには、日常から親が率先して読書して、子どもにもいろいろな物語を楽しむ習慣を付けさせるとともに、親子の日常会話の中で、親自身が言葉遣いに注意し、ヤバい、キモいといった物言いを慎むことも大事だ。

加えて、中学受験を志す子どもであれば、語彙量を増やす努力もしてほしい。今月、わたしは『13歳からの「気もちを伝える言葉」事典』(メイツ出版)を刊行した。

この本では、子どもたちに知ってほしい「心情語」を約600語紹介し、それぞれの語源や意味、そして、例文を掲載している。多くの心情語を獲得することで、とりわけ中学受験生たちにはいろいろなパターンの心情記述を作成する力を自ら涵養してほしいと願っている。

(写真=iStock.com)
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