カフェ・喫茶業界は「30年サイクル」

喫茶店とカフェの違いについて、業界の重鎮で「珈琲工房ホリグチ」の創業者である堀口俊英・堀口珈琲会長は「喫茶店はソフトドリンクの売上が半分以上、カフェはコーヒーの売上が半分以上」と定義しています。私も同じ見解です。

カフェ・喫茶業界は、ほぼ30年のサイクルで一回転します。「企業寿命30年説」のようですが、個人の店主が活躍できる期間は限られます。人気店も世代交代を果たした店は生き残り、親族やその店のDNAを引き継ぐ人がいない店は閉店しました。たとえば東京都内の個人店では、吉祥寺「もか」(1962年創業)がそうですね。「自家焙煎珈琲店の草分け」として、銀座の「カフェ・ド・ランブル」、南千住「カフェ・バッハ」と並ぶ御三家であった店主の標交紀(しめぎ・ゆきとし)さんが2007(平成19)年に亡くなり、店を閉じました。

コーヒービジネスは投資対象に

大手や中堅チェーンで経営母体が変わった会社もあります。1968年創業の「コメダ珈琲店」(本社:名古屋市)は、創業者の加藤太郎さんが2008(平成20)年に全株式を投資ファンドに譲渡しました。この時1店舗の売買価格は1億円といわれ、当時で300店を超えていた。さらに5年後、その会社が別の投資ファンドに売却。そのファンドも数年で全株式を手放し、現在は自主経営です。「珈琲館」(本社:東京都)は創業者の真鍋国雄さんが死去した後、UCCグループに経営が移り、2018年に投資ファンドに譲渡しています。コーヒービジネスが有望視され、投資の対象となったのは世界的な傾向です。

業界外のライバルが出現したことも大きい。ご存じのように「コンビニコーヒー」が一大勢力となり、現在は市場全体で年間17億杯も出ています。昭和時代にドトールコーヒーショップが当時「1杯150円」のセルフカフェ市場を築き、平成時代にセブン‐イレブンが「1杯100円」のコンビニコーヒー市場を開拓しました。ワンコインと、3たて(煎りたて・挽きたて・淹れたて)を実現したコンビニコーヒーは、「日本の新たなスタンダードコーヒー」となったのです。