「派手な動き」の父子を支える人たち
「カンブリア宮殿」では、そうした鈴木氏と太郎氏の活動に焦点が当たったが、それができるのも舞台裏の役者(従業員)の存在あってのことだ。
あまり表舞台に出てこない社長の美知子氏だが、「本店がきちんと機能するのは妻(母)の存在が大きい」と鈴木父子も一目置く。本店には約100坪の中庭があるが、ほぼ毎日、そこを清掃するのは美知子氏の役割だ。東京など離れた場所で勤務する店舗スタッフも、本店研修時に黙々と庭を掃除する社長の姿を目にしたという。
本店の従業員は女性が多く、店長は吉成百合子氏。パート勤務から社員となり、店長となった。副店長は20代の遠西由佳氏だ。JR勝田駅に近い「勝田駅前店」も、スタッフはほぼ全員が女性で、20代の松田奈子(なみ)氏を中心に運営する。サザコーヒーの店には男性スタッフもいるが、筆者の取材経験からは「女性が運営するカフェ」という印象が強い。
一方、コーヒーの焙煎業務は黒澤順一氏、輸入業務は石原俊太郎氏という40代男性が中心となって行う。「コーヒー文化学会副会長」(鈴木氏)、「日本スペシャルティコーヒー協会理事」(太郎氏)といった社外活動を行う父子の足元を、こうしたスタッフが支える。
「カンブリア宮殿」の放送後こそ正念場
在京キー局の地上波の経済番組で紹介されたサザコーヒーは、前途洋々に見えるが、筆者は、しばらく「正念場」が続くと思う。
番組の反響が高ければ高いほど、新規のお客さんが店に殺到する。その時に、今までと変わらない接客、いつものコーヒーや飲食を提供してお客さんを満足させられるか。
たとえば、サザのコーヒーは85℃の温度で提供される。これは試行錯誤した末に生み出された同社流の「適温」だが、コーヒーは嗜好品で好みも人それぞれだ。冬の時期にもっと熱々のコーヒーが飲みたい人もいる。混雑した店で行列になった時、席を待つお客さんから苦情が出るかもしれない。
「そうした懸念は社内でも持っています。テレビで取り上げられる機会が増えた今、基本に立ち返って、謙虚な商売や仕事をしなければなりません」(営業部長の小泉準一氏)