これはあくまでも推測であるが、従北姿勢を強める文在寅政権は、裏の国策として北朝鮮による国連制裁違反を恒常的にアシストしているのではないだろうか。

そもそも現場は日本のEEZ内であり、北朝鮮漁船はもちろん韓国漁船の操業も許されていない場所だ。そこに国籍を示す旗を掲げない軍艦と、5000tという大型の警備艦が出張って来ていること自体がおかしい。ところが、これを北朝鮮漁船の安全を間接的に確保するという点、そして北朝鮮船による瀬取りに対して見張りを立てるという点から考えると、彼らの動きが説得力を持つ。そして海自機に対する振る舞いも、「見られては困るものを見つけられた時の動き」と考えればつじつまが合うのだ。

日本側に証拠はいくらでもある

韓国軍の主張に対し、防衛省側は第2弾、第3弾と尽きぬ反論の証拠を持っているだろう。レーダー波のデータ公開がゴールラインだとしても、それまでに事案の発生した場所の正確な緯度・経度の数値、フライトレコーダーに記録された飛行データ、哨戒機の機首下に装備された赤外線前方監視装置の映像(これまで公開された手持ちのビデオカメラによる動画とは比較にならないほど高精度だ)などいくらでもある。

前回の原稿では、「韓国は、日本に対して何をしてもいいと思っている」と書いたが、今回はそれに「韓国は、日本を永遠に格下と思っている」と付け加えておこう。日本に謝罪することは彼らのプライドをズタズタに破壊するし、そんな日本から幾度となく経済援助を受けている事実も、むしろ恥をかかされたと恨みを買う材料になっている。日本に対するそうした精神的マウンティングが、本来対等の立場で行われるべき国家同士の対話をもゆがめてしまっている。

今回の件でも、日本が音を上げて諦めるまで反論を続けたいのが韓国側の本音だろうが、対する日本側は感情的にならず、努めて冷静に、粛々と誠実かつ紳士的に反証を重ねていく姿勢が必要だ。

芦川 淳(あしかわ・じゅん)
防衛ジャーナリスト
1967年生まれ。拓殖大学卒。雑誌編集者を経て、1995年より自衛隊を専門に追う防衛ジャーナリストとして活動。旧防衛庁のPR誌セキュリタリアンの専属ライターを務めたほか、多くの軍事誌や一般誌に記事を執筆。自衛隊をテーマにしたムック本制作にも携わる。部隊訓練など現場に密着した取材スタイルを好み、北は稚内から南は石垣島まで、これまでに訪れた自衛隊施設は200カ所を突破、海外の訓練にも足を伸ばす。著書に『自衛隊と戦争 変わる日本の防衛組織』(宝島社新書)『陸上自衛隊員になる本』(講談社)など。
(写真=AP/アフロ)
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