日本株は本格的な調整局面を迎えることが想定される
米国経済への懸念が高まるとともに為替相場では円高が進みやすい。背景には、"円キャリートレード(円を売って、ドルなど金利の高い通貨を購入し、二国間の金利差の確保を狙う取引)"の解消がある。わが国の"円"がリスク回避局面で買われる(円高になる)のは、円キャリートレードの巻き戻しから円買い需要が増えるためだ。円高は、国内企業の業績に無視できない影響を与え、株価を下落させる可能性が高い。
更に、米中貿易戦争への懸念もある。米中の貿易戦争は、ITを中心とする覇権国争いだ。それが短期間で終息するとは考えづらい。加えて、スマートフォンの販売伸び悩みなど、IT先端企業のイノベーションにも陰りが出始めている。それは、中国経済の減速や、わが国の景気回復を支えてきた産業用機械の業績懸念に直結する問題だ。
そのほかにも、新興国の債務問題、欧州の政治リスク(独仏英伊)など、世界経済にとって無視できないリスク要因は少なくない。米国の景気減速が鮮明化する中で、他の懸念材料が顕在化する場合、世界の景気敏感株である日本株は、本格的な調整局面を迎えることが想定される。
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。