米国経済が一時的に勢いづいて、ドル高・円安が進むか

2019年夏場、わが国では参院選が実施される予定だ。先行きの経済環境が見通しづらいことなどを踏まえると、衆参同日選になることも考えられる。来年10月に消費税率の引き上げ(8%から10%へ)が予定される中、安倍政権としては政権基盤を固め、長い目線で経済運営を行うことができる環境を作りたいはずだ。支持獲得のために、補正予算などを通して景気対策が発動される可能性は高まっている。

中国では景気の減速を食い止めるために財政・金融政策両面からの景気対策の重要性が高まっている。2018年12月21日に閉幕した"中央経済工作会議"の内容からもそれは確認できる。中国政府は、減税、インフラ投資、金融緩和、先端産業育成のための補助金交付などを進める可能性が高い。そうなれば、一時的に中国の景況感は上向くだろう。その際には、産業関連機器を中心にわが国の企業業績への警戒感が後退し、株価が持ち直す可能性がある。

米国でも経済政策への期待は高まりやすい。2020年の大統領選挙を控え、民主・共和両党ともに成果を示して有権者の支持を確保したい。大統領選挙に向けた点数稼ぎのために、経済対策が打たれる可能性は高いと見る。具体的には、民主党と共和党が歩み寄り、トランプ大統領が主張している中間層向けの減税が成立する可能性がある。それが実現すれば、米国経済が一時的に勢いづくとの見方からドル高・円安が進み、わが国の株価にプラスの影響があるだろう。

徐々に高まる景気の先行き不透明感

2019年の前半は、先行きへの懸念よりも政策効果への期待が勝って日本株を中心に株価は若干戻るだろう。ただ、年後半に入ると、世界的に株価は軟調に推移する可能性がある。

2019年後半以降の世界経済の展開を考えたときに重要なのは、米国経済の減速が鮮明化する可能性があることだ。状況によっては、米国のGDP成長率が潜在成長率を下回る局面もあり得る。

その中で、FRBは慎重ながらも段階的に利上げを進める姿勢を維持している。景気減速懸念が高まる中での金融引き締めに市場参加者の心理が耐えられるか、不透明感は増している。もし、利上げへの警戒から米国の株価が下落すれば、米国の消費者心理には無視できないマイナスの影響があるだろう。2020年には米大統領選挙などの不確実性要因を受けて、リスク回避の考えが一段と強くなり、米国経済が失速する可能性があるとみる。