留意点を確認しつつ、分析のデザインを述べていこう。Google Books Ngram Viewerの検索対象には、日本語文献は含まれておらず、英語文献についても同期間のすべての出版物を網羅しているわけではない。しかし、このデータベースは現時点では世界最大のものであり、言語の使用状況を検討するうえでの有力なツールであることは間違いない。
単語の使用頻度が人々の社会における関心の指標
広く書籍のなかで、どの単語がどのような頻度で使われるか。その変化を見ることで、社会における人々の関心の変化をとらえることができる。ひいては今がどのような時代かが見えてくる。
Google Books Ngram Viewerは対象データが2008年までに制限される。逆に1500年までさかのぼれることから、このツールは直近の変化ではなく、歴史的な動向を俯瞰するのに向いている。
図表1は、Google Books Ngram Viewerを使い、ビジネス分野の主要単語の使用頻度が歴史的にどのように変化してきたかを検索した結果である。対象期間は1700年以降、2008年までである。
Google Books Ngram Viewerを生かすには、用いる単語の設定をうまく行う必要がある。歴史を俯瞰しながら、今を考えるには、どのような単語が望ましいか。そこにはさまざまな選択がありうるが、今回は現代のビジネスに欠かすことのできない概念を取り上げることにした。
そこで注目したのが、英語圏を中心としたグローバルなビジネス教育におけるMBAの影響力の大きさと、その基幹科目の構成である。MBAとは経営管理の修士号(master of business administration)であり、戦略(strategy)、マネジメント(management)、マーケティング(marketing)、ファイナンス(finance)、会計(accounting)などの諸学が基幹科目として定着している。さらに経営学が企業経営を、市場(market)と組織(organization)の相互作用の問題ととらえてきたことを踏まえて、今回の用語選定を行った。
なお、Google Books Ngram Viewerを使用する際には、1単語が単位となる。そのために組織行動(organizational behavior)、人的資源管理(human resource management)、サプライチェーンマネジメント(supply chain management)のような、複数の単語を組み合わせなければビジネス上の概念とはならない用語については、今回の検討の対象外となる。