歴史上いつ、ビジネスという言葉は活発に語られるか
以上の単語を用いて300年の歴史を振り返ることで、何が見えてくるか。図表1で注目したいのは、ビジネス(business)という言葉の使用頻度が急増する時期があることである。
300年の歴史のなかで、ビジネスという言葉が活発に使われるようになる第1期は、18世紀後半であり、第2期は19世紀後半から20世紀初頭にかけてである。第1期は、蒸気機関と機械化による第1次産業革命、第2期は電力と大量生産による第2次産業革命の時期と重なる。
その後のビジネスへの言及は20世紀の中盤には低下していく。意外に思われるかもしれないが、第2次世界大戦を間に挟む50年ほどの時期は、ビジネスの冬の時代だった。しかしビジネスへの関心は、1970年代以降に再び上昇期を迎える。これは、ITがもたらした第3次産業革命の時期と重なる。
新しい動力や生産方法や情報処理などの技術の登場は、市場のフロンティアを広げる。そして人々はビジネスを語りはじめる。このような関係が見てとれる。
「MBA」が得意とするのは巨大組織の舵取り
さてMBAは、以上のビジネス・ブームの第2期の産物である。第2次産業革命が第1次産業革命と異なるのは、その結果としてスタンダード・オイル、J.P.モルガン、USスチール、デュポンといった巨大な近代企業が、さまざまな産業において続々と誕生したことである。
そして社会は、成功をおさめた産業界の巨人をいかにコントロールするかという課題に新たに直面することになる。国家レベルでは、市場メカニズムの維持が課題となり、カルテル規制や独占規制などがはじまる。個々の企業にあっては、創業者が残した巨大組織の舵取りを引き継ぐ人材が必要となる。これにこたえて、ハーバード大学をはじめとするアメリカの諸大学がMBAという教育プログラムをつくり、拡充していく。
そこでMBAの基幹科目となっていったのが、先に挙げた戦略、マネジメント、マーケティング、ファイナンス、会計などの諸学である。図1では、これらの言葉の使用頻度が、20世紀の初頭から高まっていったことが見てとれる。
それだけではない。さらに大きな転換が、ビジネス・ブームの第3期の到来とともに起きる。