留学生が“猛威”を振るっているのがバスケと駅伝だ
しかし、現在も留学生が“猛威”を振るっている競技がある。それがバスケと駅伝だ。
バスケでいうと、2000年代に入り、身長2mを超えるセネガル人の活躍が目立つようになった。その後、セネガル以外のアフリカ出身の留学生も参入するようになり、アフリカ系の選手を擁する高校が全国大会を制することが多くなった。かつて、「高校最強」を誇ってきた能代工業(秋田)が近年は、全国タイトルを獲得できなくなったことと無関係ではないだろう。
単に高校バスケの勢力図が変わっただけでなく、過去には留学生をめぐるトラブルも起きている。2004年のインターハイで優勝した福岡第一は、主力だったセネガル人留学生の年齢詐称が明らかになり、優勝記録が抹消された。高校入学時に実際は21歳と、5歳近くもサバを読んでいたという。高校側はパスポートを確認するなど生年月日をチェックしていたが、本人の母親が詐称を認めた。
なぜ年齢を詐称する必要があるのか。それは、実力あるプレイヤーを「高校生」として日本に送りたい、家族やブローカー(代理人)の意図があるからだ。陸上の世界でも、筆者はあるケニア人選手に「ケニアでは先輩だった選手が、日本に来たら年下になっていた」という話を聞いたことがある。また、年齢を詐称する意図はなくても、日本のように「出生届」が確実に機能していない国では、どうしても曖昧な部分が出てきてしまうこともあるようだ。
普通の高校生にとって“黒船”の実力は恐怖しかない
バスケと異なり陸上の場合、「タイム」という明確な物差しがあるため、留学生の実力がわかりやすい。陸上部(長距離)だった筆者が高校1年生(1992年)のときに“黒船”は突然やってきた。仙台育英(宮城県)にダニエル・ジェンガとジョン・マイタイという2人のケニア人留学生が入学したのだ。そして、その“存在”は日本の長距離を大きく変えていくことになる。
彼らの実力はずぬけていた。ジェンガとマイタイは高1春に出場した5000mでそろって14分08秒台(当時の高校歴代4位相当)というタイムをマーク。筆者の高1時のタイムが18分台だったことを考えると、その衝撃を理解していただけるのではないか。
そして、このケニア人留学生コンビを擁した仙台育英は翌1993年の全国高校駅伝で初優勝を飾る。またこの年、仙台育英は女子高校駅伝でも2名のケニア人留学生を起用してアベック優勝を果たしたことで、論議が勃発。高体連は1995年から「外国人留学生の参加はエントリー人数の20%前後」という規定を作った。