娘が突然離職し、海外留学
大学を卒業して念願の会社に就職したものの、最近はやりのパワハラで退職してしまう20代から30代前半の娘だっている。畠中さんのもとには、「今後のキャリア形成のために留学したいと娘がいっているのだが……」といった、親からの相談が寄せられる。留学先は勉強したい内容によりヨーロッパもあれば、アメリカもある。
「会社を辞めるときの理由として留学は格好いい。そこで海外に行く人はけっこういるが、ヨーロッパを選んだら生活費が高く、日本より物価が安い国を探すほうがむずかしいでしょう。月に20万~30万円は仕送りしないとやっていけません。女の子単身なのでセキュリティのしっかりしたアパートということになり、家賃だけで10万円以上はかかります」(畠中さん)
それらに加えて渡航費や学費となれば、2年間の留学で1000万円近くが必要だ。最初の1年間は自分の貯金を充てるにしても、4~5年で貯めたお金では足りない。滞在期間が長引けば娘可愛さで、親の預貯金が底を突けば万策尽きてしまうというのに、生活費と学費を送金し続けることになる。
「基本的な対策としては、社会人の娘が留学をほのめかしたら、目的をしっかりと聞き出し、預金通帳をチェックする。そして、留学中の予算計画を確かめ、留学期間も約束させます。どこまで応援できるかを決め、それ以上は何があっても出さないという毅然とした態度が必要です」(畠中さん)
ガンを発病、かさむ治療・入院費
定年を迎え年齢を重ねるほど病気にかかるリスクは増大していく。そのことに伴い突然やってくる計算外の医療費や長期入院費用の支払いも高齢者の金難の大きな要因だ。なかでも、日本人の死亡原因の第1位で、現在でも年間に約100万人が発病し死亡するのががんである。
「がんの場合、だいたい100万円を用意しておけば、公的健康保険対象の治療費プラス雑費は十分まかなえるはずです。がんは告知を受けた最初の1年間に治療費など一番お金がかかることが多く、それぐらいはすぐ現金化できるよう定期預金から普通預金に移し替えておくといいでしょう」
こう指摘するのは『がんとお金の本』などの著書も持つファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんだ。かかる費用はがんの種類、進行度(ステージ)によって違ってくる。前立腺がんなど一部をのぞき重粒子線などの先進医療を選択すれば300万円程度は覚悟しなければならない。要は患者とその家族がどのレベルまでの治療を求めるかによるが、考慮すべきは、その治療に対するコストパフォーマンスだ。