その代表的なものが月額利用料に含まれない追加費用の必要なメニューだ。例えば、1カゴ500円の洗濯代、ルームクリーニング1回1000円、通院付き添い料金といったものだ。食事のグレードによって食費が異なるケースもある。介護が必要になれば費用は一気に膨らむ。想定を上回る金額になることを頭に入れておかないと、ゆとりの老後が悲惨になりかねない。
畠中さんは「有料老人ホームを出て移る先としてケアハウスはおすすめです。公的助成があるため入居費用は首都圏でも10万円以下で探せます。ただ、自立していることが入居条件のため、介護認定を受けている人は入居できません。しかし、入居後に介護認定を受けた場合は、要介護2~3くらいまでなら住み続けられるところも」と話す。
一方、黒田さんは「高齢者の医療や介護、老人ホームなど生活上の総合的な困りごとの相談に乗ってくれる地域包括支援センターに相談するのもいいでしょう」。介護認定が3以上であれば「特別養護老人ホーム」の入所も選択肢の1つだが、「都市部では入居待機者が多くなかなか入れなくても、ちょっと離れた地方へ目を向ければ、順番待ちをせずに入居できる施設が見つかる場合も。地域によって介護サービスの差は大きい」と黒田さんは話す。
義父の葬式代と義母の生活費
葬儀の平均費用は195万7000円(17年・日本消費者協会調べ)だが、いまは30人以下の家族葬が約3割をしめ、遺体を火葬場へ直接運び、遺骨を引き取る直葬も増えている。それこそ葬儀の選択の幅は広い。故人が遺言している場合もあるだろうし、喪主となる妻や長男が自分の価値観をもとに決めることもある。
当然、費用もピンからキリまでで数十万円から数百万円。最近は一人っ子同士の結婚も多く、義父、義母の葬儀に大きく関わるケースも増えている。黒田さんは、「当事者は看病疲れや気持ちが動転していることもあって、つい勢いで葬儀社のいいなりに契約してしまいがち。まず事前に予算を決めて、最低2社以上から見積もりをとり、費用の交渉をするべきです。葬儀の費用は膨らみがちなので、基本的には予算の8掛けを伝えるといい」と指摘する。
遺族の見栄や世間体の心理が働き、ついグレードを高くしがちなもの。そこで大きな役割を果たすのが義理の息子である夫の出番だ。血のつながる親族よりは冷静になれ、妻側の遺族の気持ちを汲み取り交渉に臨める。
義父が亡くなると義母の世話の問題も浮上する。当然、妻に兄弟がいれば、同居や生活費の負担を話し合うことになるが、十分な話し合いが大切になる。
「義母の生活費については民法の規定があり、妻には直系血族、兄弟姉妹等の扶養義務が生じます。しかし、配偶者や未成年の子どもに対しては、自分と同程度の生活を営むだけの扶養義務がありますが、親、兄弟については、自分の生活を自立して成り立たせたうえで余裕のある範囲で行うのが一般的。生活費をどこまでカバーするのかは家族間の相談次第ですが、奥さんの気持ちも考え、月2万~3万円程度など、できる範囲で仕送りするのがベスト」と黒田さんはアドバイスする。