欧米では、仕事に夫人を帯同するのは普通

そして、3つ目は、家族旅行などに会社の経費を使っていたということです。これも、仕事に関係することなら、使い過ぎは問題となりますが、犯罪とまで言えるかどうかは不明です。欧米では、仕事に夫人を帯同するのは普通です。子供が小さい場合などには子供も連れていくこともあります。家族旅行で1000万円の費用と報道されていましたが、JALなどで欧州をファーストクラスで往復すれば、ひとり150万円程度はかかりますから、法外な金額ではないと考えられます。プライベートジェットを使えばさらに費用はかかります。

また、ゴーン氏は役員就任時に、基本的な契約を日産と結んでいると思いますが、もしその中に家族帯同などのことが契約条件に入っていれば、犯罪として立証するのは難しいと思われます。

いずれにしても、これらに対しては、ゴーン氏側は今のところ罪状を否認しており、法廷で真実が明かされることになると思います。

「クーデター」を起こした日産の行く末が心配

問題は日産の行く末です。日産としては、内部告発をきっかけに、ゴーン氏側には全く内緒で、東京地検に捜査協力をし、ゴーン氏を羽田空港でいきなり逮捕という「クーデター」を起こしたわけです。ゴーン氏は東京地検からの説明を受けるために1時間ほど飛行機の中で話を聞いたとされますが、そこからしても、事前に一連の動きについては一切知らなかったと言えるでしょう。まさにクーデターです。

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この手の事件の場合、通常は、まず当事者に社内で話を聞くということをするでしょうが、いきなり地検に逮捕させるというのは、よほど腹に据えかねていたことがあるとともに、ゴーン氏をとても恐れていたとも言えるのではないでしょうか。

私は、上場企業を含めて6社の社外取締役や社外監査役をしていますが、通常であれば、内部告発があった時点で、その話が社長に報告され、さらには、当事者は別として、社外役員などに報告がなされ、場合によっては対応策についての相談や協議があることも少なくないと思います。ただ、今回の場合は、おそらく社長と一部の役員のみの判断で、情報を東京地検に流し、逮捕に踏み切らせたのではないかと考えられます。