アップルの株価が下がり、アマゾンが持ち直す理由
リーマンショック後の世界経済を考える上で、スマートフォン登場のマグニチュードは大きかった。スマートフォンという新しい商品の創造=イノベーションは、さまざまなIT技術の実用化(SNSなど)を可能にし、波及需要を生み出した。それによって、中国ではモバイル決済が急速に普及した。
反対に、スマートフォン販売が頭打ちとなる中、これまでのようなペースで世界経済の回復が続くとは言いづらくなっている。その中で、わが国企業が成長を目指すには、各企業の独自の取り組みとして、新しい発想をはぐくみ、それを基にして新商品の開発を進めることが欠かせない。
今後の普及が注目されるのが、IoT(モノのインターネット化)に関する機器だ。10月以降の世界的な株価下落の中で、アップルの株価下落は顕著である。その一方、アマゾンの株価には持ち直しの兆しがうかがえる。両社の違いは、スマートスピーカーのシェアにある。アマゾンのエコーは世界のスマートスピーカー市場でシェアトップだ。グーグルや中国企業との競争も激化している。アップルはこの動きに乗り遅れている。
さらにその先の展開を考えると、人工知能(AI)を搭載した家庭用ロボットの実用化がある。それは、 「ドラえもん」が家にやってくる時代といってもよい。もし、人とコミュニケーションを行い、自律的に作業するロボットが家にあればどうだろう。家事などに割く時間が減り、より多くの時間を趣味や自己研鑽に回せるようになる。そうした夢を現実とするのがイノベーションだ。わが国の企業には、イノベーションを生み出す豊かな発想が求められている。
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。