「下請け的な役割」が強くなってきた

わが国の製造業の役割は、消費者向けの完成品よりも、海外の企業向けの部品・部材ビジネスを主とするものに変化してきた。踏み込んでいえば、世界のメーカーの下請け的な役割が強くなってきたといえる。そのため、国内企業の業績は完成品の需要動向に左右されやすい。わが国の株式市場を“世界の景気敏感株”と評する専門家がいるのはこのためだ。

見方を変えれば、わが国の企業は、新興国企業などの台頭が進む中で技術力を活かして活路を見いだしてきたといえる。企業の成長のためにそれは重要だ。さらに、新しい製品を生み出すことができれば、わが国の製造業の存在意義は大きく変わる可能性がある。わが国の企業の競争力向上には、新しい最終製品を生み出す=プロダクトイノベーションが大切だ。

なぜ、最終製品の創造が重要かといえば、それは、人々に夢を与えることができるからだ。

iPhoneの登場以後、パソコン出荷台数は減少傾向に

わが国の企業が生み出してきた製品を振り返ると、人々の生活を劇的に変えた商品が多い。ソニーのウォークマンはその典型だろう。また、トヨタのハイブリッドカーは省エネと静かな車内を実現することで、カーライフを一変させた。

これまでにはない新しいヒット商品が登場することによって、わたしたちの生活様式は大きく変わる。アップルのiPhoneの登場もよい例だ。iPhoneの登場とともに、パソコンからタブレット型デバイスへの移行が進んだ。その結果、2017年まで6年続けて世界のパソコン出荷台数は減少している。

ヒット商品の創造は、需要の創造と同義である。それが実現できれば、経済成長は可能だ。反対に人々が欲しいと思ってしまうような最終製品が生み出されないと、いずれ需要は飽和してしまう。そうなると、企業業績や経済の停滞懸念は高まるだろう。

iPhoneの販売が伸び悩んでいることを見ると、すでにスマートフォンはその局面を迎えたということだろう。その状況下、わが国の電機関連企業などの業績懸念は高まりやすい。シャープはその一例と考えるべきだ。