▼PART 1●50代の壁
役職定年・住宅ローン・教育費のピーク

支出はピークなのに、出世は頭打ちで減収に

「人生でいちばん支出が多くなる50代に、収入が頭打ちになる。これが家計破綻を招く『壁』になっています」

背景にあるのは雇用形態の見直しだ。厚生年金の支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことに伴い、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」が同時に改正されたことにある。同法は、定年を迎えたサラリーマンが、給与も年金ももらえないという「収入の空白期間」を生じさせないように、少なくとも年金受給開始年齢まで働けるようにするもので、「定年の廃止」「定年の引き上げ」「再雇用など継続雇用制度の導入」のいずれかを導入することを企業に求めている。前述のように13年4月からは、希望する従業員全員を65歳まで雇用することが企業に義務づけられた。

「この法律のおかげで定年は延びましたが、人件費削減のために50~55歳で役職定年を取り入れる企業が多くなっています。これまで年功序列で右肩上がりだった給与が、一定年齢になるとドーンと下がってしまうので、家計に破綻が生じてしまうのです。50代の壁を乗り切るためには、勤務先の給与制度を確認したうえで、早めの準備が必要です」

収入減をカバーするために、50代でまず手をつけておきたいのが支出の見直しだ。このときは、住居費やマイカー関連費、生命保険料など、ひとつひとつの単価の高いものを優先して見直すと節約効果が高くなる。特に、金利の高い住宅ローンを借りたままになっている人は、金利の低い今のうちに借り換えも検討してみよう。また、使用頻度の低いクレジットカード、見ていない有料テレビなどは早めに解約して、家計をシンプルにしておくといい。

「とはいえ、節約には限界があります。役職定年で大きく減る収入をカバーするためには、その他の収入を得るのがいちばん効果的です。最近は副業を認める企業も出ていますし、女性も働きやすい環境ができつつあります。減収分をどうやって賄うのか、夫婦でよく話し合ってみてください」