妻のパートで赤字を一気に解消できることも

老後のお金について何も対処を行っていないA家のケースでは、妻が50歳から60代前半までパートに出て、年間100万円程度の収入を得られれば、リフォームや定年退職の記念旅行など、希望するライフイベントを諦めることなく、赤字を一気に解消できる可能性が高い。老後資金をつくるうえでも、50代ならまだ運用期間があるので、投資にも挑戦できる。妻が働いたり、副業したりして増えた収入の一部を、iDeCo(確定拠出年金)やNISAなどで運用すれば、税制優遇を受けながら老後資金づくりをすることも可能だ。

負担の重い子どもの学費は、前倒しで準備しておきたい。学費は高校まで公立なら日々の家計から捻出できるが、大学は4年間で国立でも257万円、私立だと544万円で、まとまった費用がかかる(文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」、日本学生支援機構「平成28年度学生生活調査」より)。そのため、教育資金は子どもが18歳になるまでに、1人につき300万円貯めておくのが理想だ。月1万5000円ずつ積み立てれば、元本だけでも18年間で300万円以上の貯蓄ができる。国から支給される児童手当、子どもにもらったお年玉などは手を付けずに貯めていこう。

「すでに子どもが成長して、必要な時期までに教育資金を準備できなかった場合も、安易に教育ローンを借りるのは禁物です。返済が親自身の老後資金に影響するので、借り入れは慎重に行ってください」

教育資金が不足する場合、教育ローンの前に検討したいのが奨学金だ。ただし、返済義務のある「貸与型」は卒業後の子どものライフプランを大きく左右する。日本学生支援機構の貸与型の奨学金のうち、利息が加算される第二種奨学金の平均借入額は343万円。できるだけ返済義務のない「給付型」を探してみよう。

親の介護が本格化するのは、子である自分が60代になってからの場合が多いが、50代で介護が始まった場合に絶対に避けたいのが介護離職だ。当初は退職金や貯蓄で生活できても、長引けばあっという間に底をつく。親の介護が終わって、再就職しようにも、離職前と同じ収入を得るのは難しい。

日々の介護は、介護保険や行政サービスをフル活用して、ヘルパーなどの専門家に任せるのが賢明だ。介護休暇や介護休業給付なども利用して、仕事を辞めずに乗り切る方法を考えよう。