人生100年時代、定年後の生活は40年近く続く。住宅、教育ローンの返済に、医療や介護と、不安は尽きない。これまで2万世帯以上の家計診断を行ってきたお金の専門家が提案する老後破綻を防ぐための未来予測と対処法とは。

家計の悩みは、類型化できる

2017年の日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.26歳で過去最高を更新した。戦後間もない1947年は、男性50.06歳、女性53.96歳だったので、この70年間で平均寿命は男女ともに30年以上延びた。「平均寿命」が延びると、いわゆる「老後」の期間が長くなると考えられがちだが、「定年」と「平均余命」の関係から見ると、実は老後の年数は70年前とさほど変わっていない。

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47年は漫画「サザエさん」の新聞連載が始まった翌年で、当時の定年年齢は55歳。サザエさんの父・波平さんは54歳で、定年まであと1年という設定だ。「第8回完全生命表」(47年)によると、当時の55歳の人の平均余命は、男性が15.97年、女性が18.92年で、これが「老後」と呼ばれる期間にあたる。

だが、この70年間に定年は徐々に引き上げられてきた。サラリーマンの厚生年金の支給開始年齢が65歳に引き上げられたのに伴い、13年4月から、希望者全員をなんらかの形で65歳まで雇用することが企業に義務づけられており、これが実質的な定年になっている。

これを基準に老後期間を考えると、17年の65歳の人の平均余命は、男性が19.57年、女性が24.43年。実質的な老後期間は、波平さんの時代より男性が3.6年、女性が5.51年延びただけだ。

それなのに、ファイナンシャル・プランナーの藤川太さんが代表を務める「家計の見直し相談センター」には、老後に家計が立ち行かなくなるのではと心配して、相談に駆け込む人があとを絶たないという。

藤川さんは、その要因として、イベント破綻、子孫(こまご)破綻、浪費破綻、医療・介護破綻、アクシデント破綻という5つの破綻を挙げる。

▼これが人生100年を脅かす5大破綻だ!
(1)イベント破綻
暇ができたことで旅行や買い物などに大金を使ってしまう。
(2)子孫(こまご)破綻
家計の実力を考えずに子どもや孫に教育費や住宅資金などを援助してしまう。
(3)浪費破綻
定年退職して収入が減ったのに生活費の見直しができない。
(4)医療・介護破綻
健康保険や介護保険に対する無知から不要なお金を使ってしまう。
(5)アクシデント破綻
高齢者を狙った詐欺や悪徳商法にあう。