自信がある店は客を「指導」する

タメ口であったり、味の指定をさせなかったり、このモツ焼き店の「上から」な感じは、一見、マイナスにしかならない気がします。しかしそれは、店が味に絶対的な自信を持っているからこその「ふるまい」だという見方もできます。

“無骨な接客は、おいしさの裏返し”この店の常連客は全員、そのことを理解しているのです。「こだわり」を伝えるための「ルール」をつくり、それを遵守させる。これが「買わせるメソッド」のひとつ、<指導>です。

昔テレビでよく紹介されていた「お客さんを叱る大阪の下着店」も、客を「指導下」においています。客が下着をきちんとたたんで元に戻さないと、店主の女性にどやしつけられます。どうして、そこまで客に厳しいのか。店主にインタビューすると、

「良いものを、破格で売っているのだから、それを買いに来る人にもそれなりにルールを守ってもらわなければ困る。それが嫌ならウチの客になってくれなくて結構」

商品の品質と価格に絶対的な自信があるからこそ、お客さんを「指導」できるのです。

カゴを付けない自転車専門店

私は以前、スピードの速い自転車が欲しくなり、クロスバイクを買いに、自転車専門店に出向きました。店員は、私がスポーツ系の自転車を選ぶのが初めてだと知ると、ブランドごとの特徴や、自転車の選び方のポイントなどを、懇切丁寧に教えてくれました。

しかし、購入を決め、付属品を選ぶときになって、事件は起こりました。「よく買い物をするので、この自転車のフロントのところに『カゴ』を付けてくれませんか?」と私が頼むと、店員の表情が一変し、「それはできません」と断られたのです。「この間、クロスバイクに、ちょっとかっこいいカゴを付けて走っている人を見たんです。そういうのはありませんか?」と食い下がると、

「カゴを付ける人もいるでしょう。付けようと思えば付けられる。でも、ウチではやらない」

と、断固拒否されました。