マクロン大統領にとって3社統合は「大きな果実」

当初、日産トップのゴーン氏は、経営統合に反対だった。その最大の理由は、フランス政府主導で経営統合が進められると、アライアンス体制の最高意思決定権者であるゴーン氏自らの影響力が低下することを恐れたのだろう。また、同氏は企業文化の異なる自動車企業同士の経営統合はうまくいかないとの考えも持っていたといわれている。

ただ、今年に入って、ゴーン氏のスタンスは少しずつ変化してきた。最近では従来の考えを変え、経営統合を重視し始めたとみられる。ゴーン氏は2022年までルノーのCEOを務める。それまでに経営統合を実現するよう求めるマクロン政権の意向が従来以上に強くなったことが影響したものと考えられる。

マクロン大統領にとって、3社の経営が統合されるメリットは、喉から手が出るほど欲しい果実だ。経営統合は、ルノーの技術力に加え、日産の技術力もフランスのものとなることを意味する。それによって、ルノーがEVなどの開発をより効率的に進め、トヨタ、独フォルクスワーゲンを上回る世界最大の自動車企業になる可能性は高まる。

英国のサンダーランドにある日産の工場をフランス国内に移転させることも行いやすくなるだろう。組み立て型産業の代表格である自動車の製造拠点が国内にできれば、マクロン氏は雇用面で大きな成果を示すことができる。

3社アライアンスの販売台数の50%超は日産

日産は独立性を確保するためにも、ルノー・日産・三菱自動車の経営統合を避けたいと考えているはずだ。足元のアライアンス全体の販売台数の50%超は日産が占めている。そのため、日産内部でもゴーン氏の権力が強まることへの不満は相当に高まってきたようだ。

日産の43.4%の株式を保有するルノーが経営統合を実現した場合、日産も三菱自動車もわが国の企業ではなく、フランスの自動車メーカーになる。その2社が生み出してきた付加価値が、わが国からフランスに移転する可能性が高まる。わが国のGDP(国内総生産)や自動車産業の競争力を考えた時、そのマグニチュードはあまりに大きい。

20日、世耕弘成経産相は、3社のアライアンスの維持が重要であり、今後はガバナンスの在り方への議論が深まることを期待すると述べた。さらに22日、フランスのルメール経済・財務相と同氏は、アライアンスの関係が安定的に続くことが重要であることを確認し、発展には関係者の納得が欠かせないとの見解を出した。

これは、ルノーの筆頭株主であるフランス政府が経営統合への取り組みを進めることへの牽制と解釈できる。世耕経産相の発言から、わが国政府が想定する今後の展開を考えると、次のような流れが考えられる。