大企業に共通した発言の背後には、自分たちは正義を語っているという思い込みがある。社会に大きな影響力を持つ企業や経済団体こそ、謙虚に発言し、行動することが必要である。現在の日本企業の低迷は正義を行った結果なのだろうか。決してそうではないだろう。何かを誤ったからの結果であることを謙虚にかつ真摯に受け止め、真の理由を解明し、善後策を講じる必要がある。

日本企業の発想と行動は、何十年も変化がない

新卒者の採用に関する新しいルールに、光明が見出されるだろうか。期待したいが、暗澹たる気分になるのはどうしてだろう。事実、2021年以降の卒業予定学生に関して、たった2回の「就職採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」(10月15日、29日)では、来年度以降で検討を行うことが決定されただけである。意思決定の先延ばしや遅れが、日本企業の国際競争での敗北をもたらしてきた事例が驚くほど多いということをなぜ教訓としないのだろうか。

「高潔な企業のみ生き残れる」時代となっていることを強く認識しなければならない。高潔な企業とは、「当たり前のことを当たり前にできる」企業のことをいう。しかし、日本企業の発想と行動は、何十年も驚くほど変化がない。

有給休暇が設定されているのに申請しにくい企業、あるいは、申請しても上司が怪訝な顔をする企業、休日出勤をするのが常態化している企業、いまだにOJTで人材育成ができると思い込んでいる企業、パワー関係に基づいて取引先に無理難題を押し付ける企業、自社の経営戦略をコンサルタントに作成してもらう企業、子会社の役員を兼業していても役員報酬を支払わない企業、多品種の品揃えをすることを顧客ニーズに対応する方策であると信じて疑わない企業……。

「当たり前ではないことを当たり前のように実施している」企業は驚くほど多い。当たり前でないことを当たり前に見せるための姑息な作業は、組織に、そして、組織構成員にダメージを蓄積させ、いずれの時が、予想もしない深刻な問題を生じさせるだろう。

高度成長期に機能した考え方や仕組みは、今や、弊害しかもたらさなくなっていることに、少しでも早く気がつかなければならない。

加登 豊(かと・ゆたか)
同志社大学大学院ビジネス研究科教授
神戸大学名誉教授、博士(経営学)。1953年8月兵庫県生まれ、78年神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了(経営学修士)、99年神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年同大学院経営学研究科研究科長(経営学部長)を経て12年から現職。専門は管理会計、コストマネジメント、管理システム。ノースカロライナ大学、コロラド大学、オックスフォード大学など海外の多くの大学にて客員研究員として研究に従事。
(写真=iStock.com)
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